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最愛の人たち

ウィリアム・モリスの繊細で優しい色合いの美しい表紙の本だ。
あとがきに、片岡さんは二十五才の頃に、それまでたまっていた写真をすべて捨ててしまったと書いてある。過去が自分のうしろに何枚もの写真によって蓄積されていくことに気づいて、その過去をいっきに捨てたのだそうだ。
私も今となってはなぜその時そうしたのかを覚えていないが、ネガをすべて捨ててしまったことがある。プリントにした写真だけは今も残っている。
その頃はデジカメなんて持っていなかったので、写真屋さんに現像してもらっていた。
できあがってくるのを楽しみにしていて、そしてプリントされた写真を見て一喜一憂していた自分をなつかしく思う。

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今はデジカメだけで撮っているのでネガはないのだということに今さらながら気づく。
データをどこかに保存しておかなければ、撮った写真は二度と見ることはできなくなる。
デジカメで撮った写真は、いつでも見ようと思えばパソコン上で見ることができるし、プリントアウトしなければ、気持ちの変化とともに見るたびに違った印象を受けることはあるかもしれないが、時間の経過とともに味が出てくるということもない。
形のある過去がどんどんたまっていく写真と違って、くっきりとした幻の断片がたまっていく。
その幻たちを他の人たちが何かしらの状況で見ることがあるなら、その人たちの記憶の中にどんなふうな形に姿を変えて断片たちは語りかけては消えていくのだろうか。






第一部 「私は一曲のバラッドです」

服部恵子
川島明彦
服部雄介
後藤幸雄(林芙美緒)
奥村次郎

お蕎麦
天ぷら
お刺身
ちらし寿司
コーヒー

ステーション・ワゴン
セダン

タンノイ
マッキントッシュ
小型のグランド・ピアノ
バンド・ネオン

ローズマリー・クルーニー
エディ・コスタ
テリー・ギブス
ケイ・スター
イリノイ・ジャケー
ルース・プライス
ビート・ジョリー

シャルル・マットン Charles Matton


第二部 最後の一行を書くために

中野という女性
三田村という女性
島田という編集長
林芙美子
香川京子

カポーティのクリスマスの短編

エルメスの手帳にカラン・ダッシュのボールペン

手長海老のグリル
一九七七年に収穫したナパ・バァレーのカベルネ・ソヴィニョンによる大変よく出来たレッド・ワイン
水牛りモッツアレラ・チーズ(小さく切ったトマトが添えてある)


第三部 八月の午後の一瞬から

かに玉
チャーハン
酢豚
フカヒレスープ
ビーフン
ストロング・ブレンド(ドゥミタス)
ミニ・バーの酒瓶
天丼(魚の天ぷらがのっている)
ラーメン
熱いコーヒー

第四部 写真についての一通ずつの手紙
by space_tsuu | 2009-08-11 00:00 | 青い背表紙
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