長距離ライダーの憂鬱 -オートバイの詩-

サム・フランシスのことをふと思い出して、片岡さんのどの小説の中に書いてあったのかを一冊一冊最初のページから調べてみた。
どこかの高原の美術館でサム・フランシス展を見たというストーリーだったはずだというのは思い出すのだが、
なかなかそのストーリーに出会わない。
青い背表紙だったかもしれないと、それも調べてみた。
思い込みは見事にはずれた。まさかオートバイの出てくるストーリーだとは思っていなかった。
サム・フランシスの英語によるアフォリズムの小さな本を、主人公は買わずにそこでおぼえてしまう。
私だったらおそらく買っていただろう。というか、今あるなら欲しいくらいだ。
英語で読んでみたい。

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磨かれたステインレス・スティールの楕円のなかに写しとられている自分を、逆の遠近法のなかで楽しむ彼女というのは、長距離ライダーの憂鬱の中でのことだったかとあらためて思った。
もしかしたら他のストーリーやエッセイの中にも出てきているかもしれないが、片岡さんの小説を読んだことのあるライダーならおそらく一度や二度はこんな状況に出会っているはずだ。
もちろん私もその中のひとりだ。
鏡の中の世界に入りこんでしまった、現実だが非現実のような世界にほんの少しだけひたりながら走る。
おそらくまたそんな機会があるなら、サム・フランシスのアフォリズムも同時に思い出すことになるかもしれない。

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この小説を久しぶりに読み直すと、主人公の気持ちの動き方があまりにも自分と似ていることに驚いた。
ずっと片岡さんの小説を読んでいるせいで、自分がそういう考え方に近づいたのかと一瞬思ったが、決してそうではない。
もし、誰かにあなたという人はどんな人か説明してくださいと言われたら、この本をだまってさし出してしまうかもしれないと思いながら苦笑した。



第一部 中島美雪の夏

中島美雪
中尾
杉本祐子

サム・フランシス
「時間がもっとも早い」
「死には表面がない。深さだけがある」
「永遠に残るのは、ただひとつ、奇跡だけ」
「空間を移動することは、広がることである」
「光と影を解釈することから、色が生まれてくる」
「光が燃えている状態、それが色だ」
「そして、その色は、宇宙のなかにあるハーモニーのシリーズのひとつだ」
「新しいイメージにむけて切り開いていくのは、死にむけての動きだ」


クロワサンを使ったサンドイッチと二杯のエスプレッソ
冷たいグレープフルーツジュース
コーヒー
冷たい麦茶
熱い緑茶
缶入りのミネラル・ウォーター

ステンレス・スティールのタンク車
シリンダーもヴァルヴも125ccからの流用である498cc、4サイクル4シリンダーのオートバイ
ダブルデッカーの観光バス
マーシディーズ
ジャグア
BMW
リンカン
クラシックなスタイリングの国産の500cc, 4サイクルの4シリンダー
輸出用の国産を逆輸入した大排気量車
国産の750cc
セダン
ノートン・コマンド


第二部 後藤祐介の夏

後藤祐介
西野幸子
後藤純子
菊池という女性
矢野美和子
セクションのチーフ

コーヒー

第三部 中島美雪と後藤祐介の、夏の終わり

中島美雪
後藤祐介
中尾
西野幸子

オートバイ
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by space_tsuu | 2009-09-23 00:00 | 赤い背表紙(中編)
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