直径1インチのスカイ・ブルー

やや早めのランチを食べにふたりはイタリアン・レストランに入った。
席に着いて注文をし、店内をさりげなく見渡すと、レジの横に本棚を見つけた彼は、ゆっくりとその本棚に向かった。彼女も誘われるように席を立ち、その本棚の中から一冊の本を手にとって席に戻った。
彼女の本は、和食の作り方を英語で書いてある料理の本だった。
テーブルに料理が運ばれてくる間、ふたりはそれぞれの本に気持ちを集中させた。

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サラダが運ばれてきた時に、彼は読んでいた本を彼女に渡し、彼女はそれをとなりの椅子に置いた。
彼が読んでいた本は色の名前についての本だった。彼女はふたたびその本を手にとり、パラパラとめくってみた。
様々な色の名前が綺麗な写真とともに説明されている内容に加え、ところどころにコラムがあった。
ふと、ある文章に目がとまり読んでみると、「夏の晴天の10時から15時の間、水蒸気や塵の少ない状態で、ニューヨークから50マイル以内の上空を、厚紙にあけた直径1インチの穴から約30cm離れて覗いたときの色」がスカイ・ブルーなのだと書かれていた。
彼女の顔に微笑が浮かび、それをぜひとも実行するために、またニューヨークに行かなければいけないという口実ができたわねと、彼にむかって言った。
「その前にマウイ島ではなかったっけ」と言う彼の前に、トマトソースのパスタが運ばれてきた。
それを見ながら、「マウイのトマトも食べなければ」と、彼女は言い、ふたりは笑った。

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by space_tsuu | 2011-10-25 00:00 | 私の心とその周辺
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