せつなさの断面

机の上にあるメモパッドに、彼女は英語の短いセンテンスをいくつか書きとめた。
書いてから読み直してみると、スペルを間違えた箇所を発見したので、その部分を消しゴムで消した。
消しゴムの小さなカスがメモパッドの上に散らばった。
それを指ではらいながら、あ、これは「過去」だ、とふと彼女は思った。

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「現在」という「いま」が、未来の連続だとするなら、その「いま」の後には刻々と「過去」が刻まれては積み重なっていく。
メモパッドに書かれている文字は、すべて「過去」だ。
その「過去」を消しゴムで消してみる。
消しゴムによってからめとられた鉛筆で書いた「過去」は、小さくまるめられて消しゴムのカスに姿を変えた。
そして、それはゴミ箱に入れられ、やがては消えてなくなる。
このようなことをしている自分も、いつかは同じ運命だ。
未来の頂点を極めた自分の後には、膨大に積み重なった過去の地層ができあがる。
その時、その断面を見ることができるなら、面白いかもしれないと彼女は思った。
それには、ほんのりとせつなさが漂っているといい。
そのせつなさの断面を想像しながら、彼女はコーヒーを一口飲んだ。

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by space_tsuu | 2008-03-19 00:00 | 私の心とその周辺
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