吹いていく風のバラッド

『四○○字詰めの原稿用紙、というものがあります。この原稿用紙で、みじかくて3枚、多くて20枚足らずのスペースにおさめた興味深く美しいシーンを、無作為に連続させてできたのが、この本です。文庫本による、楽しいゲームのひとつです。』

と、扉の文章に書かれているように、そのゲームを私もひさしぶりに楽しんだ。

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カウボーイ・スタイルのコーヒー、暮れていく無人のプラットホームでシャンプーをするライダー、真っ青な空と椰子の木、オートバイの熱いオイル・タンクにガムテープで貼りつけたインスタント・カレー、缶詰に入った輪切りのパイナップルを食べるミュールにショーツ一枚の彼女、夫をリヴォルヴァーで打ち抜く彼女、雨の中、開いたままの傘をわきに置き、小川の中を歩く少年、海風を受けながら会話をする老人と少年、白い雲がひとつだけ浮かんでいる南カリフォルニアの空。
そのシーンのどれもに風は吹いている。地球上のどこへでも風は移動していく。
ふと、風が一番気ままで自由な旅人だということに気づく。この本は、そんな風のような人たちのストーリーだと思う。




皮むきトマトの十六オンスの缶詰
熱いコーヒー
オリンピアというブランドの缶ビール
バドワイザー
タンザニア・ピーベリーの豆をパーコレーターで
白いごはんだけをアルミ・フォイルにくるんで、大盛り一杯分
福神づけをスプーンに一杯分
インスタント・カレー
スライド・パイナップルの、20.1/2オンスの缶詰
エクストラ・ヘヴィの砂糖シロップ
熱いドリップ・コーヒー
ペイパー・カップに注いだ熱いコーヒー
強い香りのする、熱いブラック・コーヒー
ウイスキー・サワー
赤ワイン
クランベリー・ジュース
ペパミント・ロック
カンパリ・ソーダ
自動販売機の熱いブラック・コーヒー
紙コップの熱いブラック・コーヒー
インスタント・コーヒー
パパイア
マンゴ

コーヒー・ブラウンの小さなショーツ
アルミニウムのコーヒー・ボイラー
両切りのピース
頑丈なハーネス・ブーツ
煉瓦色の毛布
濃紺の小さなショーツと白い長袖のスエット・シャツ
毛足の長い、濃いオリーブ色のカーペット
淡いオレンジ色の電話機
まっ白い、お気に入りの小さなショーツ
メンソール煙草
カウボーイ・ブーツ
モーニング・ペイパーの『ホノルル・アドヴェタイザー』

ブローニング・ハイパワー
コルト社製の・45口径(シングル・アクション・アーミーの、シヴィリアン・モデル)

白いオールズモービル・トロナード
ヨーロッパ製の、二座席のオープン・カー(黒い幌)
深いあずき色のオリジナル塗装の平べったくて大きい、路面いっぱいに這いつくばったようなセダン(全長が五メートル八○センチもある)
深いあずき色の、国産のフルサイズ・セダン
2000ccのオートマティックのハードトップ
2気筒の重量車
鮮明なブルーのボディのキャデラック・エルドラードの2ドア・クーペ
黒いセダン
鮮やかな車体のプリムス・フューリーの4ドア・セダン
黄色のローレル
ハーレー・デイヴッドスンのFLH、1200cc
黒いセダン
中間的な排気量の、乗りやすそうなオートバイ(クラシックなおとなしいスタイリングのなかに新しさがほどよく溶けんだ、ストロークのみじかい4サイクル2気筒のエンジン)
キャデラック・エルドラードの2ドア・クーペ
クライスラー・ニューヨーカーの4ドア・ハードトップ
古いオールズモービル

キチンへいき、コーヒー粉の缶を開けた。アメリカン・タイプの粉をプラスティックのふたですくいとり、わきかえっている湯のなかへいれた。そして、コーヒー・ボイラーのふたをしめた。
火を弱くして、三十秒。ガスの火を消した彼女は、いつも使っているコーヒー・マグにストレーナーをかけ、コーヒーを注いだ。(カウボーイ・スタイル)
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by space_tsuu | 2008-03-01 00:00 | 赤い背表紙(中編)
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