いい旅を、と誰もが言った

あとがきから例によって抜粋してみる。

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「なんとも形容しがたいほどに広い宇宙のほんの片隅に、地球が浮かんでいる。その地球のうえに、ぼくがいる。空を見あげれば、あたりを見渡せば、宇宙が見える。すさまじい空間が、体感できる。自分というひとつの出発点のようなものを中心にして、ぼくが持っている空間意識は、こんなふうに宇宙的に広がる好奇心となって、ぼく自身に対して機能している。」
「自分の目のまえにある風景のあらゆる隅々にまで、自分が溶解して注ぎ込まれていくような心地よさや心のやすらぎを覚えるようなことがもしあるとすれば、目のまえにあるその風景は、どこかごく深いところで、自分に対してなにごとかを語りかけているにちがいない。こんな確信が、ぼくにはある。そして、この確信に支えられて、宇宙的に広がる好奇心というような空間感覚を、ぼくはぼく自身の楽しみのために、機能させている。」

こんな楽しみを分かちあえる友人のおかげで、この本は完成したそうだ。

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四つのストーリーがおさめられているが、とりわけ私にとって衝撃的だったのは『彼はいま羊飼い』の羊の去勢の描写だ。文章を読んでいると、まるで自分が目の前で見ているように映像として浮かんでくる。今だったらもっと他のやり方でやっているのかもしれないが、前歯を使って睾丸を引き抜くというやり方に驚愕した。そして、引き抜かれた睾丸は、あとでフライにして食べるという。
これもまた、無限に広がる宇宙の中のちっぽけな地球上でのヒトコマだ。しかし、そこから広がる派生音は知らず知らずのうちに無限に広がっていく。




『彼はいま羊飼い』

三枝子
スティーヴン
エレーン
コンロイ
ジャック

赤く塗ったフォードのピックアップ・トラック
一九六八年のクライスラー・インペリアルの4ドア
払い下げのスクール・バスを改造したトランスポーター
ピックアップ・トラック
二トン半のトラック
ハーヴェスター
四つのタイアのついた台車に乗せた、単純なカマボコ型の簡易移動住居のワゴン

淡く黄色いレモネード
赤いパンチ
ジム・ビーン
コーヒーにパイ
コーヒーに蜂蜜
羊の睾丸のフライ

噛み煙草

ウインチェスターのレバー・アクションのカービン

「月のリズムにうまく合わせて去勢しないと、出血が多すぎたり化膿したり、仕事がうまくいかない。
明日は、いい日なんだ。」
「人はチリから生まれてチリにかえるんだ」

『ロードライダー』

Vツインのスカイ・ブルーの大きくて平ベったいオートバイ
大きなステーション・ワゴン
ごく淡いピンク色のキャデラック
巨大な18輪トレーラー・トラック

オレンジ・ジュース
ハニーデュー・メロン
アイス・ウォーター
熱いブラック・コーヒー
焼きたてのパンケーキ
溶けたバターとメイプル・シロップ
スペア・リブ

マンザニータ
スクラブ・パイン

『アリゾナ・ハイウェイ』

真っ赤なサンダーバード
1200ccのオートバイ
赤いフォードのピックアップ・トラック
18輪の長くて大きなトレーラーを、ケンワースのロングノーズがひっぱる
鮮やかなスカイ・ブルーの平ベったい4ドアのフォードLTD

ジョー・アレクザンダー
ジョーディ
田村明彦
ブルース・デイル
ロザリン
アーリーン
ジューン
ナンシー
ジョエル

ガム
コーヒー
シーゾニングをきかせた肉を焼いたもの
ひきたての豆をつかったコーヒー

チェスタフィールドの両切り

「一杯のコーヒーに使う水を地上に雨として降らすためにどのくらいの量の雲が必要か。
都会のワン・ブロックを完全に占領している二〇階建てほどの大きさの雲があってようやく、コーヒー一杯分の水が地上に降るという。」

『雨の伝説』

ハルミ・ニシモト(西本)
ブライアン
ナターシャ・ミサモラ
スチュワーデスのサリー・フィールズ

ジープ

ビール
カニ
日本で食べるやわらかい焼ソバに、正体不明の具をもっとたくさん入れ、
片栗粉で粘らせつつ油でいためたような料理
蒸気でむした白い米
香りの強い、熱いお茶
コーヒー長いフランスパン
ビール
パンとレバーペーストの小さな缶詰め

アルミナイズド・マイラーのフィルターを装着したカメラ
800ミリの望遠レンズ
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by space_tsuu | 2005-12-09 00:00 | 赤い背表紙(短編)
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