心のままに

この物語は、ひとり用の折りたたみ式のカヌーに乗った青年と純白のクーペに乗って川までやってきてランチを食べている彼女が冒頭で出会うシーンから始まる。
片岡さんの書く物語の中には、興味をひきつけるものがたくさん出てくる。
この本は昭和六十年二月二十五日初版となっていて、その時にもかなり気になったはずなのだけど、今こうして読みかえしてみてもまだ、興味津々のものが多い。

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カヌーもその中のひとつだ。
カヌーは友達が持っているので、日本で一番深い湖に行ってカヌーを漕いだ経験はある。ボートと違って、水面がもっと近くに感じられて、湖の中央付近まで漕いでいって水面を見ると、怖いくらいの蒼に、一瞬体中に緊張感が走ったことを思い出した。
また漕いでみたい。
この物語にはさらに二人用のグラマンのカヌーというのが登場する。さっそく調べてみると、私の大好きな雰囲気のアルミのカヌーを発見した。
いつかこのカヌーで、またあの深い蒼の中に漕いでいってみたいという衝動がふつふつとわき起こってきてしまった。

もうひとつ私が昔から気になっている8ミリカメラも話の中に出てくる。8ミリカメラが登場するのではなく、8ミリのフィルムを見るという場面がある。そこを読んでいて、そういえば8ミリカメラで何かを撮りたいと思ったこともあったなということを思い出した。
8ミリ風に撮れるアプリというのもあるようだけど、今の便利な世の中で、あえて8ミリカメラで撮ってみるというのは、どんな感じだろうか。

中古の8ミリカメラを買って、グルマン社製のアルミのカヌーで日本一深い湖の上を漕いでいく。そして、深い深い蒼を撮影してみる、というアイディアは実行に移せるものだろうか。

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表紙を開いたところにある文章は、こんなふうに書かれている。
そのままここに書き写しておこう。

『物語がはじまったとき、人間関係はすでに解体されています。しかし気持ちはつながっています。どの人にも新しい関係ができつつあるとき、もとの関係の当事者たちが、ある夏の日、ひとつのところにふと集まります。解体するにせよ新しく生まれるにせよ、関係の変動こそ、ドラマなのです。夢なのです。』

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星野昌孝
宮本真理子
小島真樹子
宮本修一郎
西村映子
北沢浩之
江梨子
水島絵吝
中村恵美
中原幸雄


純白の380SLクーペ
ひとり用の折りたたみ式のカヌー
3000CCの白いステーション・ワゴン
クーペ(ダーク・グリーンの瓶に入っているときのレッド・ワインの赤)
白いピックアップ・トラック
クルーザー
60系のランドクルーザー

白い半袖のポロ・シャツ
リーヴァイス
白でこまかな花模様が染めてある淡いグリーンのバンダナ
濃いネイヴィー・ブルーのタンク・トップ
カーキー色のショート・パンツ
鮮やかなオレンジ色のゴム製のダッフル・バッグ
ホワイト・リーヴァイス
白いTシャツ
スリムなヒールのあるサンダル
内側から光を放って輝いているように見えるきれいな光沢のある白いビキニ
夏のコットン・プリントのスカートに白い半袖のシャツ
フレンチ・カットのTシャツ
ブルージーンズに皮のベルト
シャンブレーのシャツ
麻のジャケット
ひざのすぐ上までのストレートのスカート
袖なしのシルクのトップは胸に深くスリットがあり、おなじ袖なしのヴェストがトップにかさねてある。
スリムなヒールのあるバック・ストラップの白いサンダル
男物のようにカットした、ハンカチに使うような白い麻のサファリ・シャツ
白い麻のほっそりしたパネル・スカート

コールマンのアイス・サブ
ジュラルミン製のアタシェ・ケース
黒いマット・フィニッシュ・ヴィニールの三穴バインダー
カナリア色のカレッジ・ルールのノート・ペーパー
ブルーの書きよさそうなボールペン
48インチに72インチというたっぷりした長方形の白いタオル
ビアッテリのコーヒー・メーカー
8ミリのプロジェクター
8ミリのスライドのビューアー
マチスの複製
カヤック
ハミング・バード
スピネット
エディター
スプライサー
木製の洗濯ばさみ
卓上モニターのボックス型スクリーン
二人用のグラマンのカヌー

ランチ・ボックス
ガラス瓶に入った冷たいミネラル・ウォーター
シャンペインをすこしだけ濃くしたような美しい色のハーブ・ティー(カモミールの花の香り)
アップル・パイ
ウエッジに切った水瓜
ブラックコーヒー
おしるこ


「時間はどこへいってしまうのかしら」
「過ぎ去るのよ」


「私は、自分のために新しい状況をつくりたいのよ。過ぎ去ってどんどんたまっていく時間を、無理やり、ご破算でいちどゼロにしてみたいの」

「空の色が、素敵」


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by space_tsuu | 2013-09-13 00:00 | 赤い背表紙(中編)
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