彼のオートバイ、彼女の島

あとがきは室謙二さんという人だ。
『この小説の中にも出てくるが片岡義男の音楽についての描写は、熱烈な音楽愛好家で楽器はまったくダメという人の書くようないやらしさがなくていい。彼はピアノとかギターとかを自分で楽しみながら自分のために弾ける人間だろう。彼の小説の中によく音楽が出てくるけど、その時の音楽の楽しみ方が受け身ではない。音楽をやる楽しみが気持ちよく描かれている。』

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片岡さんは、音楽についても様々な本を出しているけれども、私も聴くだけではなくて、演奏をする人なのではないかと思っていた。様々なエッセイなどに、ちらりちらりとそういう断片が顔を出す。ピアノも習っていたようだし、ウクレレも弾くようだ。きっと、聴くだけでは物足りなくて自分もやってみたいというタイプの人なのかもしれない。習いなさいと言われて、はい、そうしますという人には思えない。

『片岡義男の小説の中のセックスは、やりきれないしっとがまざっていなくていい。こういうしっとのまざらないセックスを描ける人間は、しっとに苦しんだ人間かもしれない。』

私は、必ずしもそうではなく、もしかしたら、嫉妬などせずに、自分の中でうまく消化できる人なのではないかと思うのだが、どうだろう。多かれ少なかれ、嫉妬をしない人間などはいないだろうけれど、片岡さんの場合は、嫉妬なんて格好悪いからしないとでも言いそうだ。

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『彼のオートバイ、彼女の島』を読んだ時は、私はバイクに乗ったことがなかった。今またこうして読み返してみると、書かれていることのディテールが、リアルに体感できて嬉しい。



橋本巧(コオ)
白石美代子(ミーヨ)
野沢圭子
松岡ナミ
沢田秀政
沢田冬美
中原麻里
有名な時代小説家
ミーヨの母親
ミーヨの父親
栄光ロードレース・クラブAJE支部の幹部のひとり
ミス・アジア
小川敬一
村田
瀬沼
小野里

濃紺を基調にして、燃料タンクに赤と白を使ったカワサキの650RS・W3
白い2 ドアのスカイライン2000GT
ホンダ・GL1000LTDゴールドウイング
CB400
CB750
白いセリカGT
ホンダのベンリイCD125
ホンダの黄色いCB400フォアⅡ
ヤマハのGX750
ヤマハのRD250
メグロのK1
濃いグリーンのコロナ・マークⅡ
黒っぽいグロリアの4ドア
ホンダの350
ヤマハのTX650
カワサキのZ750

にぎりめし(梅ぼし)
ほうじ茶
冷えたコーヒー
アイス・ウインナ
綿菓子
焼きソバ
お好み焼き
大きなフランクフルト・ソーセージ
果物
紅茶クッキー
オレンジ・ジュース
ビール
九〇〇円の「高原弁当」
コーヒー
オニオン・スライス
ピザ
特大のアンチョビー・ピザ
サラダの大盛り
大きくて古風なデコレーション・ケーキ
ほどよく冷えた白いワイン
シャンペン
ウォッカ
峠の団子(甘いような、からいような団子)
熱いブラック・コーヒー
ゴハン
ポーク・アンド・ビーンズのカン詰め
コーン・スープ
フリーズ・ドライのビーフ・シチュー
ミント・ティー(ミントの葉を、紅茶にブレンドして、お茶にする)
チャーハン

ワイン色のラッカー仕上げをしたシグのボトル
コダックのポケット・カメラ
黒いケースに入ったキブスンのハミングバード
黒い皮のオートバイ・ジャンパー
14オンス・デニムのブッシュ・パンツ
ハーネス・ブーツ
裏皮のペコス・ブーツ
マーボロ
ワイア・ハンドルのついた、ステンレス・スティールのカップ
折りたたみ式の、三枚の金属プレートでできたストーブ

ショパンの練習曲『エオリアン・ハープ』
『アランフェス交響曲』

『退屈だからにちがいない。退屈だと、なにをやっても、自分の好きなように、どんなふうでも適当にごまかせてしまうから。音楽だって、そうだろう。だけど、オートバイだけは、適当にごまかすことはできない。ごまかしていると、やがてかならず、しっぺがえしがくる。厳しいんだ。だから、乗るのさ、最高の緊張だよ』
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by space_tsuu | 2004-11-09 00:00 | 赤い背表紙(中編)
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