きみを愛するトースト

この本には55のエッセイがつまっている。どれもこれも素敵だ。どれもこれも今にいたる私に多大な影響を与えている。

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「ぼく」の誕生日に、英語とフランス語で細かなメモが書かれた手帳の三月二十日のページをとりはずし、その片隅に素敵な日本語のメッセージを書き添えて封筒に入れ、「ぼく」に送る彼女。

窓のない部屋での会議の途中に、架空の窓を想像し、様々なシーンを思い描き、最後にはシャワーを浴びながらブルーマルガリータをひと口、またひと口と飲んでいる。グラスの縁の塩に頬をつたわって流れる涙の味が加わる。

キリコの塔の上ではためく旗の話。

バーボンを飲むにあたって、どのような女性がふさわしいかについて。この女性像は私の憧れだ。酒が強い人でなくてはいけないという部分くらいしか、まだあてはまっていないかもしれない(笑)

そして、尾道のあのバーの話。私はこれとほとんど似たようなことを実行した。もちろん迷うことなく甘いほうのマンハッタンをまっさきに頼んだ。つまみのサンドイッチがとてもおいしかった。
壁には片岡さん直筆のハガキがひっそりと貼られていた。

猫の多江子の話。こんなふうな話が大好きだ。読んでいると、いつしか私が多江子の目線になっているのだった。

幼い頃から学生にかけての片岡さんの話も出て来る。大学の時に小学校から高等学校までの全教科の教科書を買い集めて勉強したことや蛸つぼの話も興味深いものだった。

最後には、口をきくトーストの作り方が書いてある。真冬の朝、焼けたばかりのまだ温かいトーストにくっきりと白くハートのかたちが描かれている。そののなかにI love you.と永遠のワン・センテスが浮き出ている。スクランブルド・エッグスも温野菜もたいらげ、コーヒーを飲み、真冬のなかにステーションワゴンで出て行く。交差点で信号待ちをしながら、胃のなかでコーヒーや卵や野菜と一緒になってぐちゃぐちゃになったI love youを想像する。

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ざっとかいつまんでも、こんなに素敵な文章がたくさんある。私にとって、この『きみを愛するトースト』は、キラキラと輝く宝石箱のようにまぶしく大切な本だ。
どこで読んだか忘れてしまったが、表紙の写真は実は上下逆にしてしまったと書いてあったのを思い出したので、キチンから一本フォークを持ってきて、本に添えて写真を撮ってみた。




-ワルツ・モデラート
ケイコ
ミツコ
サチエ
『テンダリー』ウオルター・グロス

-パリから一通の封書が届いた
「あなたの誕生日にあなたのことを思っています」

-日時計の影
ミネラル・ウオーターの満ちた、大ぶりなグラス

-ウエイトレスに惚れて以後
『恋におちて』

-あの店でコーヒーを飲みたい
エスプレッソ
ワイキキのコーヒー

-青い瞳の普遍性

-テキーラの陽が昇る
ブルー・マルガリータ

-彼女の部屋の、ジャズのLP
ジョニー・スミス。ジージ・シアリング。イリノイ・ジャケー。バド・シャンク。
スタン・ゲッツ。チェット・ベイカー。ハワード・ロバーツ。ジミー・クリーヴランド。
エディ・ヘイウッド。
タル・ファーロウ「ハウ・アバウト・ユー」「エニシング・ゴーズ」「アイ・ラヴ・ユー」
「リーン・オン・ミー」「ワンダー・ホワイ」「イッツ・ユー・オア・ノー・ワン」
「テンダリー」

-塔の上ではためく旗
デ・キリコ
『大きな塔』『通りの神秘と憂鬱』『赤い塔』『ある一日の謎』『出発の不安』
『幼児の脳中』『静物』『哲学者の征服』『イタリア広場 大勝負』

-白い、半袖のシャツ
葡萄
白い半袖のシャツ

-ウディ・アレンについて、僕のコメント
『ウオッカの広告』『ヴェーガス』『二度めの結婚』『誘拐されて』『不幸せな子供の頃』
『エッグス・ベネディクト』『経口避妊』『失われた世代』『ウディ・アレン』
『ハンナとその姉妹』

-渋谷の横町を、植草さんのとおりに歩く
『植草甚一スクラップブック』
ヒサモトでコーヒー
「石井さんのところ」
ニラをまぜた野菜をラードでいためるにおい
焼き魚のにおい
『草の枕』ナンシー・フェラン(一九六九)
『冬を歩けば』エドウィン・ウエイ・ティール(一九五七)
『ガンジス河をゆっくりくだる』エリック・ニューバイ(一九六六)
カスミというコーヒー店
『姉妹』というギョーザ屋さん

-クリスマスと五人の娘たち

-海岸でキャッチ・ボールをした日
黄色と紫色の小さな鉢植えのスミレ
赤いボールに、赤いベース

-女性たちがニューヨークへ消えていく

-明日の朝、私も泳ぎます
夜のプールは、それだけでひとつのドラマだと、いまふたりはそれぞれに思う。

-カントリー・アンド・ウエスタン・ソングの内部へ
『リリース・ミー』

-彼女と一台の自動車
一台の美しいクーペ

-小さな旅、愉快な思い出
上出来のエスプレッソ

-「恋」というひと文字をじっと見る

-地図を見たとたん

-バーボンを飲むにあたって
自前の知的エネルギーに裏打ちされたユーモアのセンス。魅力に頓着していない、しかし魅力的な、細身の体。
女言葉を多用しない気質ないしは体質。酒に強いこと。頭がいいこと。知らないとか、わからないなど、言わな
いこと。笑い声に個性がほしい。股関節が柔らかいこと。骨盤がまえに倒れていないこと。このふたつはバーで
は重要だ。股関節が硬く、骨盤がまえに倒れていると、バーのカウンターでまるでさまにならない、ただただし
どけない。いかり肩、そして腕が長いと、なおいい。

-部屋までの長い道のり
ステーション・ワゴン
大きなボウルにたっぷりとサラダはあり、いろんな種類のグリーンの葉やトマト、力を弱めた玉ネギなどに、ド
レッシングが絶妙にからんでいた。
広い皿に縮れたレタスを敷き、その上にクレープを一枚だけ乗せ、さらにその上に、チーズがあった。火にかけ
て溶けはじめたその瞬間のチーズのかたわらに、小さく小さく切ったトマトが添えてあった。

-あのアロハ・シャツの謎が解けた
『地上より永遠に』
『ザ・ハワイアン・シャツ』

-尾道の、あのバーで待ち合わせ
素敵なアメリカン・ウイスキーで甘いほうのマンハッタン

-ディズニー映画から学んだこと

-道路の小説を書きたい

-猫の寝る場所
猫の多江子
ショパンの二十四のプレリュード

-リロイ・ニーマンを受けとめる
『プレイボーイ』

-登場人物たちの住む部屋

-女性作家の作品を支持する

-買い物のしかたについて
アメリカ製の空気銃の弾

-恋愛は三人ですると面白い

-『アウトサイド』という雑誌
『アウトサイド』
『アウト・オヴ・アフリカ』

-『パリ・テキサス』という雑誌
『モーテル・クロニクルズ』サム・シェパード
『パリ・テキサス』

-ふたりは一九六六年を思い出す
ビートルズはモノクローム
『ビートルズの芸術』

-ボード・セイリングの町
『ウインド・サーフ』

-幼い頃の自分について語る
なまこ


-中学生にはなったけれど

-不思議なパズルのような本だった

-生まれてはじめての旅

-五年前の湾岸道路
ジンジャブレッド・ボーイ

-結婚する理由がない、と彼女が言う

-映画とヒット・ソングと、大事な彼女

-否定的にとらえて本質にせまる
『源にふれろ』ケム・ナン

-RとLと日本人
『ミスタ・ムーンライト』

-夜遅く、ジャズのLPを探してみる
『コーリング・ザ・ブルース』

-前線基地としての彼女の部屋

-映画について学んだ日々

-まず最初に、ステーション・ワゴンを

-黄昏どきの町はウイスキーを求める
シーグラムノセヴン・クラウン
「ザ・シュア・ワンをくれ」

-サンドイッチなら作ってあげます
サブマリーン
(昔ふうの潜水艦の船体に見えなくもない形をしたパンを、切り離すことなく横に切り開き、両側からそれぞれパン
をすこしむしり取ってくぼみを作り、そこに好みの具をたくさん重ねあわせ、パンを閉じ、元気に食べる。

-定点観測のワイキキ

-水の上に漂う煙
大きなグラスにミネラル・ウオーター

-きみを愛するトースト
熱いコーヒー
スクランブルド・エッグス
昨夜のうちに作っておいた温野菜
コーヒー
トースト
バターマーマレード
ハートのなかにI love you.と凸で浮き出ているプラスティックの板
ステーション・ワゴン
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by space_tsuu | 2005-09-24 00:00 | 赤い背表紙(エッセイ)
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