すでに遥か彼方

エッセイやショートストーリーが書いた日付け順に並んでいる楽しい一冊だ。
例によって、あとがきから少し抜粋してみよう。

「時間や都合のつくかぎり、そしてこのぼくにでも書きうる内容であるかぎり、書くことにしている。
一週間にひとつは、エッセイを書いているだろう。忙しくてしめきりを忘れていたときなどは、小説原稿のしめきりよりもはるかに気持ちの負担が重いこともしばしばある。しかし、とにかく、書いてしまう。書くことがゲームのようになっているからだろう。」

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「ぼくは日記というものを書かないし、これからも書かないだろう。一見して日記のように見えるこの本をあらためてひろい読みしてみると、書いたのはどれもみなごく最近であるのに、すでに遥か彼方の
出来事として、まるで他人の文章のように読めてしまう。ひとつひとつのゲームをぼくがどんなふうに楽しんだかを、ぼくは第三者のような気持ちで、遠い向うに思いだしているのだ。」

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一九八五年二月とあるので、ちょうど二十年前の二月だ。この本のタイトルどうり、書かれた時は「すでに遥か彼方」に過ぎ去ってしまっている。この本にとっても私にとっても過ぎていった二十年という時間はそれぞれ違う質の時間だが、中に書かれている文章に目をとおすことによって、この二次元という紙の中にだけ静かに流れている時間の渦のようなものに一気にとりこまれていく。この本に限らず、文章という渦は決して本の外側に出ることなく、開くたびにその文章が書かれたある日ある時に戻ることができるひとつのタイムカプセルなのかもしれない。




1月1日 ビートルズ
『プリーズ・プリーズ・ミー』
『トゥイスト・アンド・シャウト』

1月7日 ダブル・バーガー
一九七七年モデルのキャデラック・エルドラードという2ドア・クーペ
ダブル・バーガーとコーク

1月12日 父のシャツ
ビジネス・シャツ
ブリフケース(英語の書類や手紙、雑誌、読みかけのペイパーバック、皮表紙のルースリーフ・バインダーになった手帳、
リーガル・パッド、チューインガム、煙草)
万年筆やシャープ・ペンシルやボールペン、完璧なアンティーク時計としての造形をたたえていた腕時計
ベルトのバックル、サスペンダー、カフ・リンクス

1月20日 私の学校

1月27日 シナリオ
『再会の時』

2月2日 メイン・テーマ
『ライヴ・イン茅ヶ崎』

2月11日 女性

2月22日 L A
『アウトレイジャス LA』 ロバート・ランドー

3月1日 英会話
『ヨシ、ニューヨークへ行く』

3月7日 弁当

3月13日 フィクション1
キャンパー

3月20日 写真
リオグランデ・ゼファーという汽車
二○○ミリの望遠レンズを使い百二十五分の一秒のシャッター・スピード
『秋の最後の美しい日々』
『ウォールデン』

3月31日 フィクション2
コーヒー
ごく淡いブルーのレター・パッド
エスプレッソ

4月1日 本物
全長二四フィートのサーフボード(オロ)

4月4日 ショート・パンツ
マスタングのオープン

4月17日 フィクション3
ペリエで割ったドライ・ジン
ユウコ(優子)
裕子

4月26日 季節

5月1日 大学

5月11日 男物のシャツ
紅茶

5月15日 林檎の樹
一九七四年モデルでボディの色色はダーク・ブルー、ルーフの色は淡くてきれいなピンクの
クライスラーのニューヨーカーの4ドア(440キュービック・インチのV8エンジン)
ドーナツ
パンケーキ
コーヒー
キャンディ・バー
甘くセンチメンタルなバラッド

老人
マージー

5月27日 ショート・ショート
アップル・パイ
白いベンツ
ラジオ・カセット
クラリネットの四十奏

6月1日 ポンティアック
一九六六年の2ドアのポンティアック・グランプリ(ボディは黄金色でルーフは黒。黄金色といっても
キンキラではなく、たいへんに渋くてなおかつ華やかな、くすんだ黄金色)
一九六五年のポンティアック・ボネヴィルのオープン
シックな濃紺のポンティアック・テムペスト

6月6日 脚

6月14日 セーター

6月20日 カウボーイ
マーボロ

6月29日 写真集
『アメリカの子供たち』

ダイアン・アーバス。ウォーカー・エヴァンス。ロバート・フランク。ジェイコブ・リース。
ルイス・ハイン。エドワード・ウェストン。クラレンス・ホワイト。
ノラ・シーハン
スーザン・キスマリク

コダックのロール・フィルム

『ひどい目にあわされている人たち』
『若き釣人たち』
『眠っているニール』

7月1日 フィクション4
スイス製のゼリー・キャンディ(ブラック・カラントのエキスを、ゼラティンや寒天、それにグリセリン
などを使ってかなり硬い楕円形の粒にかためたパスティールが入っていた)
コーヒー

コダクローム64のカラー・リヴァーサル・フィルム

国産のV6、三○○○ccのステーション・ワゴン
4サイクル単気筒の四○○ccのオートバイ
振動で有名な4サイクルの2気筒

7月7日 再びビートルズ
『ラバー・ソウル』
『ウィズ・ザ・ビートルズ』
『ミート・ザ・ビートルズ』
『ビートルズ・フォ・セール』
『ア・ハード・デイズ・ナイト』
『ヘルプ』
『イエスタデイ』
ロバート・フリーマン
『プリーズ・プリーズ・ミー』

7月26日 人妻
緑色のソーダ水

8月1日 書評
一九四六年のホンダA
一九八三年のヤマハXT600Zテネレ
『オートバイ・グラフィティ』(「ひとりのバイク好きの思い入れ集」中沖満著書)
「そんなに速くコーナーに突っこむわけではないからアンチノーズダイブもいらないし、エンジンがダレる
ほど回さずに一〇〇キロも走れば一服したくなるからラジエーターも水もいりません(あとがきより引用)」

8月4日 デラックス・ダブル

8月10日 ヒップ
直立2気筒のオートバイ
北緯四○度三○分

8月12日 避暑地

8月13日 詩集
ロッド・マッケンの詩集
『アローン』(日本語訳では「ひとり」)
『ハイド・イン・ハイド』
『父をさがす』
『月は銀色のリンゴ』

8月15日 誕生日
三津子さん
一九六○年代なかばのオールズモービル442のコンヴァーティブル

8月25日 噴水

8月30日 ラハイナ
紙の皿に盛ったテリヤキのプレート・ランチやマカロニ・サラダ
コーヒー

9月1日 ゴールデン・ゲート
『スーパースパン』
ジョゼフ・B・ストラウス
『サンフランシスコ・ブレティン』

9月5日 キャンディ・バー
マース、ベイビー・ルース、バターフィンガー、ミルキー・ウェイ、スニッカーズ、クラーク、
ミスター・グッドバー、スリー・マスカティアーズ、ゼーロ、ペイデイ、ミルクシェイク、バ
ター・ナット、トウィックス、マウンド、キャロブ・ココナット、ミール・タイム、モルティ
・クランチ、クラッケル、ホワッチャマコールイット、リーゼス、ザグナット

チューインガム
コカ・コーラ
ハンバーガー
ホットドッグ
アップル・パイ
バナナ・スプリット

かたいキャンディ・バー
やわらかいヌガーやタフィー
キヤラメルなどを内部に持ち、外部をチョコレートの壁で囲んである、やわらかいキャンディ・バー

『グレイト・アメリカン・キャンディ・バー・ブック』

ハーシーのミルク・チョコレート
ハーシーのミルク・チョコレート・ウィズ・アーモンド

9月27日 島
コーヒー

「エネルギーがきっちりとコントロールされて、動いているんだ。停滞とか横ばいを、ぼくはきみに
感じたことがない。いつ会っても、このまえよりもいちだんと素敵になってる」

ウオツカをレモン・ソーダで割ったもの

10月1日 ジョーク
The day turned out to be so hot in Manhattan a fire hydrant hailed dowe a dog.
I had a De Lorean once, but I finally had to give it up. When you drove down the highway,
it would suck up the white line.

10月13日 模型飛行機

10月14日 手紙
マーティン

10月16日 足音
<世の中すべてギヴ・アンド・テイク>

「私はあなたになにをあたえることができてるの?」

10月22日 台風
ランドクルーザー

11月1日 演説

11月2日 六○年代

11月10日 バスケット・ボール

11月23日 フィクション5

12月1日 スープ
『ニューヨーカー』
チキン
ヌードル

12月15日 らしさ
クエイカー・オーツ
オートミール
パンケーキ・ミックス
ジマイマおばさん
ホウレンン草のおひたしを冷凍にしたような食品のビニール袋のジョリー・グリーン・ジャイアント
モートンの塩のパッケージの傘をさした小さな女の子

『トップ・セラーズUSA』

プランターズ・ピーナッツのミスタ・ピーナッツ
クラッカー・ジャックの少年水兵さん
ダンカン・ハインズ
ハインツ
ダーキーズ
ベスト・フーズ
ビアトリス・フード・カンパニー
サラ・リー
クラフト
アーマー
ライフ・セイヴァーズというドロップ
キング・ジレット
クレイヨーラのクレヨン

12月31日 1月1日のこと
バックギャモン
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by space_tsuu | 2005-02-27 00:00 | 赤い背表紙(エッセイ)
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