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湾岸道路

実在しない彼女と彼だが、私の理想の筆頭にあげられるふたりだ。
芙美子さんという女性は心によどんだところがひとつもない。
気持ちがしっかりしていているから、悩みもない。
彼女は、杉本さんのおかげで、ついに自分というものを発見できた。
素敵だと思うと高価な品でもポンと買って夫の通帳を空にしていた買い物魔の彼女だったが、どこか本当の自分ではないような感覚だったのではないだろうか?
その空虚な部分を探し求めるために買い物をしていたのだと思う。
それが、杉本さんとの別れをきっかけに、オートバイに乗ることや自分自身の身体を鍛えることによって、ついに本当の自分というものの輪郭をくっきりと表面に現すことができたのだと思う。

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杉本さんは、考え方が面白い。
格好いいと思ったことをすぐに実行してしまう。
芙美子さんのようなとびきりの美人と、あっという間に結婚してしまうのが格好いいと思い結婚するが、離婚してどこかにいってしまうのはもっと格好いいと思いつき、そのとおりにする。
我がままな子供のようにも思えるが、自分というものを自分自身でしっかり把握していて、自分の理想像に限りなく自分を近付ける努力もする。
このふたりを合わせたような人に私はなりたい。

片岡さんの小説には様々なオートバイが出てくるが、「湾岸道路」ではハーレーだったので、私も乗るならハーレーだと決めた。
この「湾岸道路」を大型免許の取得の時もお守りがわりにバッグにしのばせていたほどだ。
以前友達に貸したことがあるのだが、戻ってきた時に表紙がかなり白っぽく擦り切れたような状態になり、角も今にも切れそうになっていたので、少し悲しかったがテープで貼っている。
どこか古本屋でで見つけたら表紙だけを変えるためにもう一冊買おうかななどと思いつつ、今もこのままだ(笑)
(この文章を書いた時には買っていなかったが、今、2013年夏には綺麗な湾岸道路をもう一冊手に入れて持っている。)

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扉に書かれた文章にこうある。

「元気でいろよ」のひと言を残して、彼はあの年の夏の彼方へ消えてしまった。
あとにひとり残された彼女としては、生まれつきの才能を努力で鋭くみがきあげ自分もどこかへいっしまうほかに、充実した生き方はなかった。だから彼女は、そうした。
ふたりともいなくなり、陽が射して風が吹き、これ以上のハッピー・エンドはどこにもない。

この文章は片岡さん自身かが書いたもので、この時はこう書くしかなかったのでこう書いたそうだ。湾岸道路を読んだ人はきっと、芙美子さんが杉本さんに捨てられて、自分も同じようにハーレーに乗ってどこかに消えてしまうストーリーだと思う人が多いだろうが、実は違うそうだ。

彼女が絶対必要で、彼女がいなくては生きてけない彼が「元気でいろよ」と強がりを言って去っていく。彼にしろ他の誰にしろ、誰をも必要としなくても、ひとりで平然と生きていける彼女が、自分のもとを去っていった男に、ほんの冗談のつもりでもう一度会えると面白いかもしれないと思い、自分もハーレーでどこかに消えていくというストーリーなのだそうだ。




杉本(川島)芙美子
杉本健介
中村
中島美智子
杉本の母親
杉本健介の姉の博子
敬子
直子
由美
斎藤
キャサリン
マイケル

チェリー・チョコレート・フィズ
(金属製のグラスのなかに氷がいくつかあり、そのうえに、チェリーの香りのするチョコレートとミルクが注ぎかけてある。さらにソーダを注ぎこみていねいにかきまぜる)
ラム・パンチ
スモークした牛の舌やポーク・スペア・リブ
カナダのベーコン
イタリアン・ソーセージ
青菜とサイコロのように切ったベーコン
サフラン・ライス
(玉ネギとガーリックで味をつけた米を軽くフライし、サフランとチキンを加え、煮たもの)
[深みのあるブルーの丸い皿のいちばん外側に沿って、こまかくきざんだパセリを、輪に置いてある。その内側は、おなじく輪になるように、置いた、こまかく切ったトマトだ。そして、そのなかに、美しい黄色に仕上がったサフラン・ライスが盛ってある。]
アプリコット・ブランデー
コーヒー
ブランデー
インスタント・コーヒー
ダイキリ
(アイス・クラッシャーで砕いた氷をカクテルのシェイカーに入れ、そのうえにアルコール度の低いホワイト・ラムを適量注ぐ。ライムを一個、ナイフで半分に切り、ふたつとも指先でシェイカーのなかにしぼる。ライムの皮をナイフでむきとり、指先で皮をしぼりつつグラスの縁を撫でる。シェイカーをよく振り、なかみをカクテル・グラスのなかにていねいに注ぐ)
大きな赤いリンゴ
焼きそば
煮込みうどん
ドライブ・インのテイク・アウトのコーヒー
ミネラル・ウォーターの小瓶
ジン・アンド・ビターズ
オレンジ・ジンのハイボール
淡いピンクの桃の香りの自家製アイスキャンデー
パターをつけたバゲット
パパイア
チキン・ヌードル・スープ
コーヒー・バッグのコーヒー
オリーヴ・オイルとタバスコ・ソースだけをかけたスパケッティ
コーヒー・メーカーのコーヒー
ドライ・ジンのオン・ザ・ロックス
お茶とようかん


クライスラー・コルドバ(白に近いごく淡いクリーム色の2ドアのアメリカ車)
四輪駆動のピックアップ・トラック
スポート・グライド
FLHのドレッサーの改造車
4気筒の750
500くらいのスリムなシングル
Vツインのおおきなやつ
国産の2800ccの白いセダン
エイヴィスで借りたステーション・ワゴン
50ccのお買い物用バイク
ダブル・キャブになった四輪駆動のピックアップ・トラック
(深みのある赤いボディ・カラーやストライプの色)
50ccの小型のオートバイ
キック・ペダルでエンジンをかける125cc
濃紺の燃料タンクとサイド・カバーにクロームの部分が美しく調和した単気筒4ヴァルヴの250cc(車重が277ポンド)
900ccのオートバイ
440ccのオートバイ
トライアンフ
1200ccのハーレー

チャイコフスキーのピアノ協奏曲の第一番 Bフラット・マイナー

ウエンガーのスイス・アーミー・ナイフ
(フェノリック・レンジでつくった赤い柄の小型のポケット・ナイフ)
クローム色の皮手袋
淡いスモークのサングラス
クローム色のパックスキンの手袋
シンプソンのモデル62のヘルメット(透明なシールドのついたフル・フェイス)
ベルのスター・ヘルメット
コンパックのサドル・バッグ

「苦い味が好きな人って、体が丈夫なのですって」
「苦味よりも酸っぱいのが好きな人は、漢方では体が弱いっていうふうになる
んですって」

スタンディング・フロント・プレス
ジャンピング・スクワット
フライング・スクワット
スプリット・スナッチ
プリット・クリーン・アンド・ジャーク
by space_tsuu | 2004-08-15 00:00 | 赤い背表紙(長編)
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