散ってゆく花

表紙をめくったところに「ビールをごくごくと音をたてて、いっきに飲んではいけないようだ。ビールはそんなに単純ではない。きちんと物語のなかに置いてあげると、ビールは相当な屈折をかかえた、複雑で微妙な飲み物であることがはっきりする。ビールを単純に飲まないために、物語の哀しさを知る。」と書いてあった。
カバーデザインを担当した津嶋佐代子さんという人の感想だろうか。

「六月の薄化粧」の中のいくつかのシーンをあげてみた。

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雨のなかをスーツ姿で歩いてずぶ濡れになった彼女は居間でずぶ濡れのまま缶ビールを飲む。

スカートをたくしあげた彼女が彼に肩車をしてもらって海に入っていく。彼女は右手にビールの缶を持ったままだ。
彼の顎まで水が達するところまで歩いていき、さらにしゃがんで彼女は胸まで海水に浸かりずぶ濡れになる。
波打ちぎわに戻りビールを一口飲んだ彼は顔をしかめたがそのまま飲み下し「完全の海の水だ」と言う。

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海岸へ下りるための階段のなかばにふたりは座る。彼が彼女より一段上に座っている。
彼の両脚の間にいる彼女は彼の膝に腕をかけ軽くよりかかっている。
海を見ながらビールの缶を交互に飲む。
「あのときのビールは、きみの口紅の香りがした」と彼は言った。

熱い湯のなかにゆったりと体を横たえた彼女は浴槽のなかで冷えたビールを飲む。

性的に汗だくの時間を存分に過ごしたあと、暗く暑いキチンに行き、そのなかで裸のふたりは抱きあって冷たいビールを飲む。ビールを飲みこんでいくときの、おたがいの腹の筋肉の動きを混じりあう汗の膜をとおして、ふたりは快感としてうけとめる。

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単純にビールを飲まないために、今夜は自分で自分のストーリーを作って実行してみるのも楽しいかもしれない。




缶ビールのシックス・パック(毎回ちがった銘柄の外国のビール)
ケーキ
ボンベイ・ドライ・ジンのロックス

『ロマンスなら上海』

水谷慎二
大沢哲夫
黒田節子
白井真知子
森下君枝
金沢節子
三宅せつ子

コーヒー
ビール
ケーキ
お茶
焼き味噌
ドイツの地元のビール

『彼がいる場合、いない場合』

島田美保子
柴崎徳子
原田次郎

お茶
鯛料理
クリュディテ
クリーム・コーンスープ
バゲット
ビール
野菜スープ
オニオン・グラタン
紅茶
コーヒー
チョコレート
ドライ・シェリー(ドン・ゾイロ)
ノーマンディのカルヴァドス
ウォッカの変種のような東欧の地酒
瓶に入った外国のビール

オリーヴ色とくすんだベージュ色とに塗り別けされた
フォルクス・ワーゲンのマイクロ・バス(タイプ2)
C-56という蒸気機関車
自転車(昔の、イギリス風のごつくて黒い自転車)

コダックのIS025から400までのフィルム
二百ミリのレンズをつけたカメラ

『セヴンティーン』

森本武彦
伊東千枝子

ヴォルヴォのエステート・ワゴン
ダーク・グリーンのクライスラー
銀灰色のシヴォレー・ベル・エアのクーペ

1957年シヴォレー・ベル・エアのスポーツ・クーペのモデル・キット

トースト
パーコレーターによるコーヒー
ジュース
ベーコンを三枚。かりかりに油を抜いて。卵はふたつ。
淡い緑色の小さな瓶のスイス製のビール

『散ってゆく花』

野沢克美
野沢教子
野沢澄江
山下敏幸
木崎(梅田)時子
熊野公彦
藤寺祐三
玉村金次
西尾雅昭
葉山留美子
稲垣雄吉
大場勇次郎
谷坂晴孝
橋本
石井
三原
愛染涼子
清水歌江
相原美津子
秋川佳代子
木下麻里子
二宮純子

マイクロ・バス

お寿司(握りと巻き寿司)
てんぷら
サラダ
海苔
ドレッシング
ビール
小判のかたちに焼いた卵焼き
大根おろし
西瓜
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by space_tsuu | 2004-05-16 00:00 | 赤い背表紙(短編)
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