気温24度、風力タービン

彼女はヘルメットをかむり、グローブをはめ、オートバイのエンジンを始動させた。
オートバイに乗るのは、彼女にとって今年初めての日だった。
オートバイに久しぶりに乗る時、彼女は毎年、少しだけ緊張する。
しかし、いったんオートバイにまたがり、少し走ると、それはどこかに消えていく。

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彼女は最初に空港へ向かった。
走りながら飛行機が見えることを期待したが、残念ながら飛行機の姿は確認できなかった。
空港への近道は避け、以前使われていた道路のほうを選んだ。
さほどカーブが多くない道路を空港に向けてしばらく走った。
やがて空港への十字路にさしかかったが、彼女は空港へは向かわず、反対方向に曲がってみた。
そして、彼女は空港の近くの小さな駐車場に入った。
しかし、そこには駐車せずに、車止めをよけながら、くるりとUターンし、そのまま今度は、無料の自動車専用道路に向かった。
そこで周りの様子をちらりと確認し、スピードをかなりの速度まで上げてみた。向かい風と横風によって少し不安定になったので、彼女は減速しつつまっすぐな道路をひたすら走った。
今日の目的は、海沿いに立ち並ぶ風力タービンを見ながら走ることだ。
彼女は河にかかる小さな橋を渡り、風力タービンが並ぶ海沿いの国道へ向かった。
人どおりの少ない川沿いの細い道を通り、今度は幅の広い大きな橋をさっき来た方向と逆に走った。
跨線橋をくぐった次の瞬間、大きなプロペラをゆっくりと回転させた風力タービンが、彼女の左前方に姿を現した。
彼女の顔には満面の笑みが浮かんだ。
何度もその方向を見ながら、アクセルを一定に保った。
気温が24度の穏やかな春の午後だった。
あたたかな日差しを全身に浴びながら、彼女は幸福だった。

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by space_tsuu | 2008-04-23 00:00 | 私の心とその周辺
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