2006年 06月 06日 ( 1 )

Ten Years After

片岡さんの小説には、時々マンションなどの間取りが詳しくわかるような描写が出てくる。たとえば次のような感じだ。

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『ロックを解放し、ドアを開いた。なかに入った。明かりがひとつも灯っていず、なかは暗かった。
ドアを閉じ、靴を脱いだ。うえにあがり、壁のライトスイッチをオンにした。玄関口の明かりが灯った。
みじかい廊下が、玄関口から直角に奥にむけて折れ曲がっている。ダイニング・キチンのドアと洗面・浴室のドアとが斜めにむきあっている廊下のつき当たりに、ドアがふたつならんでいる。
右のドアは寝室、左のドアは居間だ。彼は、居間に入った。明かりをつけた。
十二畳のスペースのなかに、本棚を中心にした収納棚、オーディオ装置、小さなライティング・デスク、作業用の横に長い机、それにカンヴァスのデッキ・チェアなどが、要領よく配置してあった。』

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私はこういう描写がとても好きだ。読みながら、その空間の中を歩いているような気持ちになる。部屋の香りや光の加減、壁紙やドアの形、床を歩く感触までを想像の中に楽しむ。想像の中の部屋は、まるでホテルの空間のように思える。日常生活にあるようなごちゃごちゃとしたものは一切なく、何も散らかっていない。そのような空間で生活したいと思うが、現実では、なかなかそうはいかない。
だから、時おり、ホテルに泊まって、小説の中の空間を現実の空間と交差させて遊んでみる。
次にホテルに泊まる時は、最後の解説に出てくるチョコバーでも買って、ひとりホテルの一室でチョコバーの甘さにひたってみようかと、思いついた。

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by space_tsuu | 2006-06-06 00:00 | 赤い背表紙(中編)