カテゴリ:オレンジの背表紙( 3 )

こちらは雪だと彼女に伝えてくれ

女性ふたりと男性ひとりの三角関係の状態から、いつしか男性が追い出される。
素敵な女性たちはとても仲良しになる。
そんなストーリーが確かいくつかあったはずだが、これもその中のひとつだ。

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「初冬の静かな日曜日。彼は真理子に電話して彼女とその夜を過ごした。月の光が淡くふたりをつつむ、すてきな時間だった。次の週末彼は枝理子の部屋で過ごした。彼は彼女のすべてを美しいと言い、彼女は淡く微笑んだ。ある時、真理子は言った。「うれしいわ、あなたが、あんなすてきな人とつき合っているなんて」と。後日、枝理子も同じようなことを彼に言った。」
扉の文章だ。

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実際にこのようなことがあれば、三人の関係はそこで壊れてしまうというのがおおかただ。別の存在を知った時点で自分から身をひく人、とことん追求してもうひとりの女性をけ散らし勝利をもぎとる人、三人ともまたひとりひとりバラバラになる場合、あるいは取り返しのつかない修羅場に発展することさえあるだろう。
そうならないのは、それほどお互いに好きという感情がないからではないかと言う人もいるかもしれないし、小説なのだからこんなストーリーがあるんだと言う人もいるだろう。
読んでいてこんな状況は嫌だなとか、せつないなとかいう感情がわき起ってこないのは、私の中にそういう部分があるからなのだろうか。
そういう可能性が少なからずあったとして、もし万が一そういった状況にはまり込んでしまっても、精神的な中庸の状態は保っていられるのだろうか。
ただひとつ言えることは、ふたりの女性たちが同じ感覚を持っていなければまず無理だろうということだけは確かだ。

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by space_tsuu | 2009-04-03 00:00 | オレンジの背表紙

ドアの遠近法

あとがきに、ローリー・コルウィンの『いつもいい気分』という小説に出てくる花屋の老主人と客の面白い会話と、シドニーの花売りの少年のエピソードについて書いてある。

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およそかけ離れたふたつのエピソードがここでこうして結びつき、誰をも傷つけることのない、そしてなにとも利害関係を結ぶことのない、美しい小さな嘘がひとつ誕生する、とある。
さらに「花が嘘を誘うのだろうか。美しい女性も、嘘を誘うからぼくは好きだ。うまい嘘で最後まできれいにだましとおしてくれるような女性を、ぼくは素敵だと思う。」と続く。

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世の中には嘘が蔓延している。見え透いた嘘、あからさまな嘘。嘘が嘘で塗り固められ、どうにもこうにも収拾がつかなくなってしまった嘘。どれもがどっぷり汚れていて、悪臭を放っていそうなものばかりだ。
せめて、ふとした時に、花のように美しく、害のない嘘をつけるような人になりたいものだ。そして、その嘘には、ほんの少しだけせつなさがプラスされていると、なおさらいい。

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by space_tsuu | 2006-08-18 00:00 | オレンジの背表紙

最愛のダークブルー

あとがきを読むと、片岡さんのブラックなユーモアが顔をのぞかせていた。
『私のなかの三つの夏』は、完全に年増のストーリーなのだそうだ。年増と言って悪ければ、たとえば身のまわりの人間関係のなかでどんなことが起こっても、動じたりせずに自分なりのクールな対応をすることのできる人たちなのだと言いかえている。

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この五つの短編小説の中では、この本のタイトルにもなっているように、本人は『最愛のダーク・ブルー』が一番気に入っているそうだ。姉にいちばんよく似合うのは、きれいなダーク・ブルーだとしめくくっているが、他にもいくつか似たようなストーリーがあったように思う。今度、ちょっと探してみようかと思っている。
片岡さんの書く文章には、ブルーがよく出てくるが、本人の好きな色なのだろうか。ブルーが好きだという人は世の中にたくさんいると思うが、私もそのひとりだ。
空の青、海の青。暮れゆく青。夜明けの蒼。青、蒼、碧。ひとくちに青といっても、その色の幅は無限だ。綺麗だと思う反面、恐怖心を生む色でもあるし、心情的に使われる場合は、憂鬱な気持ちを表す不思議な色だ。そして、私たちは、その青い星の上に立って暮らし、青い宇宙を眺める。

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by space_tsuu | 2006-06-14 00:00 | オレンジの背表紙