カテゴリ:私の心とその周辺( 55 )

永遠の島

真冬の南の島
暑すぎもせず湿っぽくもない心地いい風
オートバイに二人乗り

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犬たちのお昼寝タイム
そこには永遠があった

突然降り出したスコール
濡れながら走る
椰子の木は見る見るうちにその色を濃くしていく

天国のような白い砂の島
嘘のようなコバルトブルーの海

頭上の白い鳥たち
青い海の中で出会った海亀
海底に横たわる時間の中から陽光を見上げる

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あなたは幸せでしたか
雲の切れ目が左右に開き
満月には一日早い月が姿を現す

それが答えでした。

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by space_tsuu | 2009-02-14 00:00 | 私の心とその周辺

内面をさらけ出す

写真は、その人の念を写し出すというが、やはり私もそう思う。
様々な人が撮る写真をながめていると、確かにそこにはその人それぞれの意識が現れているように思う。
それはおそらくその人自身も気づいていない潜在的な意識や感情だ。

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写真を撮る技術の巧い下手にかかわらず、あるいはその写真を好きか嫌いかにかかわらず、私は時には心を揺さぶられ、時には気恥ずかしくなるのはそのせいかもしれない。
だから逆に、自分の写真は私自身をさらけだしているように感じて、照れくさくなる。

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by space_tsuu | 2009-01-14 00:00 | 私の心とその周辺

ブルーの中に浮かぶうろこ雲

コンビニエンスストアから出てきた彼女は、まっすぐに自分のオートバイに向かって歩いた。手に持っている袋をサドルバッグに入れていると、ひとりの初老の男性が彼女に声をかけてきた。
「何cc? 250? 400?」
「800 くらいです」と、彼女は答えた。

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「お、すごいじゃない。ちゃんと乗れる? 俺もオートバイの免許は持ってるんだよ。これから、寒くなるからそんなに乗れなくなるね。雪マークもそろそろ出ていたしね」と、その男性はオートバイのシートをなでまわしながら言った。
彼女がオートバイの後をまわり左側へ向かうと、その男性はオートバイから少し離れた。
彼女はオートバイにまたがり、グローブをはめ、ヘルメットをかぶった。
「これは何ていうバイク?」という質問に、彼女はオートバイの車種を答え、エンジンをかけ、その男性に軽く一礼し、駐車場をあとにした。
仕事場が入っているマンションに着き、オートバイから降り、ガレージに入れようとした時に、彼女はタンクに映るマンションを発見した。
サイドスタンドをたて、リュックからカメラを取り出し、その様子を何枚か写真に撮ってみた。すると青空の中に白いうろこ雲が盛大に広がっていることに気づき、彼女は思わず空を見上げた。
うろこ雲の広がりと同調するかのように、彼女の顔にも同じように笑顔が広がっていった。

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そしてその時、知り合いのブログで読んだ言葉を思い出した。
「voir tout en bleu」
すべてを青く見る、ものごとを楽観的に考えるという意味なのだそうだ。
自分の気持ちのすみずみにまで、そのブルーがしみ込んでいくような心地よい錯覚を彼女は楽しんだ。

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by space_tsuu | 2008-11-15 00:00 | 私の心とその周辺

彼女のグラス

様々な酒のボトルをながめながら、それぞれの酒に合うグラスについて考えてみる。
凍らせたウォッカを注ぐグラス、ブランデーのグラス、赤くてほんのり甘いカクテル。
そして、自分をグラスにたとえるなら、自分はどんな酒に似合うグラスがいいだろうかと想像してみる。

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by space_tsuu | 2008-11-06 00:00 | 私の心とその周辺

いつか見た夢

「君は少年のようだ」と彼は言った。
「外見はどこからどう見ても女性そのものだ。しかし、心の状態はまさに少年だ。少年そのものと言ってもいい」
「だから髪を長くしてるのよ。ショートにしたら、あからさまに自分をさらけ出しているみたいできまりが悪いわ」
「君は、他の女性たちとはどこか別のところを歩いている。それがいいとか悪いとかではなく」

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彼女はほんのり微笑を浮かべながら、だまって海を見つめていた。彼らのななめ後ではまっすぐ一列に並んだ風力発電機がゆっくりとプロペラをまわしていた。
「空がもっと青かったらよかったのに。残念だわ」
「また来ればいい。オートバイで来てみるのも悪くない」
「夕陽の時間なら、もっといいわね」

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彼らと少し離れた場所に、黒い犬を連れて浜辺を散歩している人がいた。おなじ浜辺に立っているにもかかわらず、その光景はなぜか別の場所にいる人たちをながめているように思えた。
はっきりとした雲の形を確認できないくらい空全体が白く広がる中にいるからだろうか。
それとも、先日見たキリコの本のせいだろうか、それはまるでキリコの絵の中に入り込んでしまったかのような、あるいはいつか見た夢の中にいるようだと彼女は思った。

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by space_tsuu | 2008-10-08 00:00 | 私の心とその周辺

飛行機からながめる宝石

飛行機は定刻に羽田空港を離陸した。
数ヶ月前の同じ時刻にこの飛行機に乗った時は、珊瑚色の夕焼けに雲が染まっているのをながめていた。
しかし、今回、離陸と同時に彼女の眼下に見えたのは、小さなビーズのような宝石たちがちりばめられた湾岸地帯だった。

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数時間前、彼女はアイルランド人とアメリカ人の友達とランチをとった。その前の晩はイギリス人とオランダ人、そして日本の友人たちと地中海料理に舌鼓をうった。
その様子がまるで夢の中の出来事のように思えた。
ゆっくりと旋回する機体の窓から外をながめていると、ふと飛行機の左翼の先端の光と、地上の無数の光が同化して、まるで高度の差がないかのような錯覚におちいった。
彼女はしばらくの間、脳と気持ちとのバランスがうまくとれないような、どこか別の空間に浮遊しているような、あるいは自分の夢の中に現実ごと入り込んでいるような不思議な状態の中にいた。

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自分の部屋にたどり着いても、それはまだ続いていた。食欲もまったくわかず、冷たいビールを喉に流し込んでみた。飲んだ瞬間、自分はものすごく喉が乾いていたことに初めて気づいた。
テレビのスイッチもいれないまま、彼女はしばらくの間、ソファの上によりかかるようにしてじっとしていた。
不思議と眠くもなかった。その感覚は、本当に眠っている時にゆっくりと意識が覚醒してきているがまだ浅い夢の中にいるという状態と似ていた。

彼女はグラスに不規則な形のブロックアイスをいくつか入れ、ホワイト・ラムを注いだ。それを少しづつ飲んでいれば、いつしか夢の中にもう一度引きずり込まれていけるのではないかと期待した。そしてそれはやがて期待どおりになった。
窓の外から月の光が部屋に射しこみ、やがてそれは時間をかけてその角度を変えていった。

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by space_tsuu | 2008-09-24 00:00 | 私の心とその周辺

ベージュの幌に雨の音

新しいオープンカーを予約した彼女は、今乗っているオープンカーに乗って、最後のドライヴをすることにした。
空は夏の終わりを名残惜しんでくれと言っているように、右のウィンドーごしに、暑い日差しが運転している彼女の頬に降り注いだ。
それを彼女は心地よく感じていた。
国道を南下して、右側に海をながめつつ、いつもオートバイで走るルートを走った。
途中にある「ロケット発祥の地」という標識をながめると、いつも彼女は、本当にここがそんな場所だったのだろうかと疑問に思う。
しかし、盛大にあおられている髪を左手でなでつけながらアクセルを踏むと、すぐにそのことはどこかへ消えていった。

買ってから10年くらいになるこのオープンカーは、ロールバーがついているが、今度買う車にそれはなく、しかも2シーターだ。
信号待ちで、ふと後部座席に目をやり、人が乗るスペースにしては狭すぎることを再確認して苦笑した。

キラキラと魚のうろこのように光る海の表面を見ながら、今年は砂浜に降りていないことを思い出し、ふと寂しくなった彼女は、途中で引き返し、風車の回る砂浜に行くことにした。

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ここにもう何年か後には、さらに風車が増える予定だという記事を読んだ時の彼女の顔に笑顔が広がっていったことが記憶の中から鮮明に浮かび上がってきた。
その時に飲んでいた珈琲の香りと味も、何かにたぐりだされるように思い出した。
助手席に横になっているステンレスのボトルを彼女は見た。
記事を読んだ時に飲んでいた珈琲と同じものが中には入っている。
風車と海を見ながらこの珈琲を飲もう、と彼女は思った。

風車が充分に大きく見えるところまで走ってきて、彼女は車を停め、自動でしまる幌のスィッチを押した。
そしてステンレスのボトルを持って、風車の下を通り過ぎ、そのまま枯れた草の間を砂浜に向けて歩いていった。

流木を見つけた彼女はそこに座り、珈琲を飲んだ。
海は穏やかに輝いていた。
しばらくその様子を見つめていると、どこからともなく現れた巨大な雲が一気に彼女の背後上空に忍び寄っていた。
この時期特有の雨雲だ。
この雨雲による雨と晴れの境を彼女は何度か見たことがある。

ひとつぶふたつぶと彼女の腕にその雨滴は当たり始めた。
彼女は濡れながら、さらに珈琲を飲んだ。
カップを持っている手を海のほうに長くさし出すと、雨滴がコーヒーにとけ込む様子が見えた。
雨がさらに勢いをましてきたので、彼女は車に引き返すことにした。
運転席に塗れた体を滑り込ませるようにして、エンジンをかけた。
ワイパーを作動させ、さらに海に降る雨をながめた。
海と雨粒の地球を舞台にした壮大なドラマを想像しながら、二杯目の珈琲を一口飲んだ。
バラバラとベージュの幌に打ちつける雨の音が強さを増していった。
この音を聞くのは、これが最後なのだと、彼女はふと思った。

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by space_tsuu | 2008-08-27 00:00 | 私の心とその周辺

先月は空からながめた

梅雨があけたすぐの連休最終日に、彼女はオートバイで高原の風力発電機を見に行くことにした。
穏やかな海沿いを南下し、途中から無料の高速道路に乗った。
ところどころのフェンスの切れ目から海が見えるたびに、ヘルメットの中の表情がかすかな微笑に変化しているのを自覚しつつ、彼女はアクセルを一定に保った。
高速の出口近くで、目の前に巨大なプロペラがいくつも立ち並んでいる光景が目に飛び込んできた。彼女は顔全体に笑顔が広がるのをおさえることはできなかった。
一般道に降りてから、彼女は海沿いの細い道に沿って走ってみた。
カラフルなビーチボールや浮き輪とともに海水浴客たちが、夏の恩恵を思う存分楽しんでいる様子をながめながら、自分がこうして海水浴に来たのはいつが最後だったのだろうと思ったら、ふとスイカの香りが漂ったような気がしたが、すぐにそれは消えた。

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高原の方向を示す標識どおりに、彼女は左折した。
高原へ向けて、いくつかのカーヴをこなすと、大きなプロペラとともに牧場が見えてきた。
牧場にオートバイを停め、彼女はしばらくそこにいる牛や羊を観察した。売店にはたくさんの観光客がひしめきあい、ソフトクリームを食べたり、おみやげを買ったりしていた。彼女もいかにも濃厚そうな牛乳を一本だけ買った。

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エンジンをかけ、プロペラのある方向へオートバイを発進させた。途中、道路の脇にオートバイを停め、何枚か写真を撮ってみた。彼女は魚眼レンズのカメラを持ってくるのを忘れたことを少しだけ後悔した。
さらにそこからほんの少しだけ行くと、レストランのような建物がある駐車スペースがあった。そこにゆっくり入っていくと、プロペラの軍団が海の方向に向けて立ち並んでいるのを見ることができた。
先月このプロペラたちを彼女は飛行機の中から見下ろしていた。
今それをこうして近くからながめている。飛行機の中の自分とここに立っている自分両方を想像しながら彼女は写真を撮った。
夏の暑い日差しが、黒のジャケットに黒のパンツ姿という体全体に吸収されて、この光景が知らない間に記憶の一部に変化していくのを心地よく感じていた。

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by space_tsuu | 2008-07-22 00:00 | 私の心とその周辺

表参道の地下鉄から

時計のデジタル表示を見て、イベントが始まる時間には、遅れてしまいそうだと彼女は思った。
地下鉄は表参道の駅に着き、ドアが開いた。
降りようとした瞬間に、彼女は見覚えのある男性に気づいた。
彼は軽い足取りで地下鉄の階段のほうへ向かった。
彼女が声をかけようかと迷っている間に、すぐさま人の波が彼と彼女の間になだれこんだ。

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彼女は彼を見失わないように気をつけながら、程よい距離を保ったまま、彼の後に従った。地下鉄から地上へ出る階段をのぼりながら、追いつこうと思えばすぐにでも追いつける距離を、彼女は彼の歩調に合わせるようにしてそのままキープした。
彼女は彼の軽快に歩く姿を観察しながら、彼と自分との間にある距離と歩くスピードを心地よく感じていた。
しばらくすると行く先の信号が赤に変わった。
彼女は少し緊張しながら、信号待ちをしている作家に声をかけた。
作家は、一瞬驚いたような表情をしたあとで、
「遠いところをわざわざありがとうございます」
と言ってくれた。
彼女は「来たかったので」と一言だけこぼれるように言うのが精一杯だった。
ふと彼は「僕の前を歩いてください。後から見ていますから」と言った。
彼女は照れくさいのとはずかしいのが入り交じり、「道がわからないので」と言い、そのまま並んで歩いた。

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ふたりはぽつりぽつりと話す程度で、歩く速度はずっと一定したまま、いつしかカフェの階段の前に到着した。
彼女はお先にどうぞと手振りで階段を示したが、彼は彼女を先にうながした。
彼女は緊張しながら階段を降りた。そして、彼があとに続いた。
午後のあいまいな時間に、その日のイベントが始まった。

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by space_tsuu | 2008-06-24 00:00 | 私の心とその周辺

気温24度、風力タービン

彼女はヘルメットをかむり、グローブをはめ、オートバイのエンジンを始動させた。
オートバイに乗るのは、彼女にとって今年初めての日だった。
オートバイに久しぶりに乗る時、彼女は毎年、少しだけ緊張する。
しかし、いったんオートバイにまたがり、少し走ると、それはどこかに消えていく。

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彼女は最初に空港へ向かった。
走りながら飛行機が見えることを期待したが、残念ながら飛行機の姿は確認できなかった。
空港への近道は避け、以前使われていた道路のほうを選んだ。
さほどカーブが多くない道路を空港に向けてしばらく走った。
やがて空港への十字路にさしかかったが、彼女は空港へは向かわず、反対方向に曲がってみた。
そして、彼女は空港の近くの小さな駐車場に入った。
しかし、そこには駐車せずに、車止めをよけながら、くるりとUターンし、そのまま今度は、無料の自動車専用道路に向かった。
そこで周りの様子をちらりと確認し、スピードをかなりの速度まで上げてみた。向かい風と横風によって少し不安定になったので、彼女は減速しつつまっすぐな道路をひたすら走った。
今日の目的は、海沿いに立ち並ぶ風力タービンを見ながら走ることだ。
彼女は河にかかる小さな橋を渡り、風力タービンが並ぶ海沿いの国道へ向かった。
人どおりの少ない川沿いの細い道を通り、今度は幅の広い大きな橋をさっき来た方向と逆に走った。
跨線橋をくぐった次の瞬間、大きなプロペラをゆっくりと回転させた風力タービンが、彼女の左前方に姿を現した。
彼女の顔には満面の笑みが浮かんだ。
何度もその方向を見ながら、アクセルを一定に保った。
気温が24度の穏やかな春の午後だった。
あたたかな日差しを全身に浴びながら、彼女は幸福だった。

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by space_tsuu | 2008-04-23 00:00 | 私の心とその周辺