カテゴリ:私の心とその周辺( 55 )

キャンベルの赤い缶

私が片岡さんを読むきっかけとなった「and I Love Her」の主人公の彼女が、
私の理想の彼女の筆頭だ。
そして彼女が食べるものは、ことごとく私の興味の対象になった。

中でも、朝食に食べていたビーフ・ヌードル・スープ。
この罐詰めの中身を深いパンにあけ、その罐にいっぱいの水を加えてかきまぜ、
電熱コイルのうえに乗せ温めるというだけの簡単な食事だ。
他にライムの香りをつけたサイコロ状のゼラチンと何種類かの野菜で作ったサラダ、
大きなグラスいっぱいのミルク。

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私が働いていた美容室では昼食と夕食を作ってくれる人がいたので食事には
困らなかったけれど、彼女の食事がとても魅力的に思えたので、朝食や休日には
時々真似をして作ってみたりした。

今でも、このキャンベルの缶を見つけると、ついつい買い込んでしまうのだが、
最近ビーフ・ヌードル・スープを見かけないのでチキン・ヌードル・スープで
我慢している。

味が好みだというよりは、こうして食品庫に並べて、それを時々眺めるのが
好きなのかもしれない。
そして、実在するこの彼女が今もアメリカでキャンベルの赤い缶を開けたりして
いるのだろうかと想像すると楽しい。  

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by space_tsuu | 2004-03-17 00:00 | 私の心とその周辺

不思議な香りのするウォッカ

片岡さんの小説を読む前は、ほとんどお酒を飲まなかったけれど、読みはじめると、いろんなストーリーの中に登場するお酒が気になって、どんな味がするのか確かめてみたくなった。

「ストリチナーヤ」のように名前をそのまま書いてあったりマティーニのようにカクテルの名前が書かれているのは、すぐ探し出すことができたけれど、「バッファロー・グラスという名の草の葉の香りをつけた不思議な味のするウォッカ」とはいったいどんなウォッカなのか、気になった。

 
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薄いグリーンに色付いたウォッカの中に細い藁のような草が一本入っているウオッカを見つけた時は、これだ!と確信した。ラベルには牛のような絵が描いてある。
バッファロー・グラスはバイソン・グラスまたはズブラとも言うそうだ。

大きな氷にズブロッカを注ぎ一口飲むと、小説に書かれているように不思議な味と香りに包まれて、私は一瞬にして架空の時間の中に迷いこんでいく。 

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by space_tsuu | 2004-03-16 00:00 | 私の心とその周辺

ストリチナヤでバーバラ

彼女は階段を登り、左に曲がって2軒目のカフェバーのドアを開けた。
こじんまりとした店内にはいくつかのテーブル席があり、何人かの客でうまっていた。入り口のドアの右側はカウンター席になっていた。
カウンターの中から「いらっしゃいませ」と、にっこり笑顔を向けたバーテンダーは、まだ世間ずれしていないような若い男性だった。
彼はアメリカの国旗を縦にしたようなシャツを着ていた。もうひとりのパーテンダーも同じものを着ていた。
彼女はカウンターに座りメニューを見た。

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特別企画と書かれた箇所に、「今ならウォッカ、ジンなどのボトルをキープすれば、それで作ったカクテルが100円で飲めます。」と書かれてあった。
彼女はストリチナヤをボトルキープすることにし、バーテンダーにそう告げた。彼はどんなカクテルにしますかと聞いてきた。彼女は彼にまかせるから、最初は少し甘めのカクテルを作ってくださいと言った。
彼はうなづいて、シェーカーに氷を入れはじめた。
ほどなくココア色のカクテルができあがった。
ナツメッグが少しふりかけてあるそのカクテルを彼女はひとくち飲んでみた。ウォッカとコーヒーリキュール、そして生クリームがほどよく溶け合ったほんのり甘い味にナツメッグの香りがアクセントになっていた。
彼女は笑顔になった。彼も笑顔になり、「バーバラというカクテルです」と彼女に言った。

ボトルキープをしたこともあって、彼女は仕事帰りによくその店に立ち寄るようになった。そして、ウオッカで様々なカクテルを作ってもらい楽しんだ。ウォッカはすぐになくなったので、ジンもボトルキープしてみた。

彼と彼女は次第に親しくなり、いろんな所に出かけたりした。ある暑い夏の日にダット・サンで誰もいない砂浜まで降りていき、クーラーからゴードンのジンとトニックウォーターと氷、そしてグラスを取り出し、ジントニックを作り、水平線を見ながら乾杯した。
さほど遠くない場所に風力発電のプロペラが回っているのが見えた。

今では、ふとした時に彼女が彼にバーバラを作ってみたりする。

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by space_tsuu | 2003-12-22 00:00 | 私の心とその周辺

海亀と一緒に泳いだ

ハワイ島のワイコロア・ヴィレッヂというところに泊まったことがある。そこはかなり広い敷地内をゴンドラのような船とモノレールのような乗り物で自由に移動することができた。宿泊するホテルはいくつかに分かれ、様々なレストランも敵地内のあちらこちらに点在していて、そのどちらかの乗り物に乗って移動してもよいし、散歩がてら歩いて行くこともできた。プールもいくつかあり、海水ラグーンでは魚たちと一緒に泳いだりして楽しむことができた。

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シュノーケルをつけた私は、海水プールの中を覗きながら様々な魚たちを観察し、ひとときを過ごした。浮かぶような泳ぐような中間の動作でプール内にある大きな滝のほうまで進んでいくと、ふいに目の前に一匹の海亀が現れた。私はその亀に触れてみたい衝動にかられ、後を追った。かなりの距離まで近付いたので亀の甲羅にむかって右手を伸ばしてみた。しかし、意外に亀との距離は遠く、甲羅に触れることはできなかった。さらに距離を縮めると、その亀は人間ほどの大きさだということがわかった。もしかしたら、人間よりひとまわりも大きかったのではないか。水の中の遠近感に驚きつつも私はその亀にタッチすることができた。
亀に別れをつげ、しばらく他の魚たちをながめつつ、時おりプールサイドにあがってカクテルを飲んだりして過ごした。

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部屋に戻る前に、また亀に会いたいと思った私はさきほど出会ったあたりまで再び泳いでいってみた。
なかなか亀は見つからなかった。小さなボートのような船が浮かんでいる下に小さな魚の大群を発見したり、すぐ足下のうつぼに驚きつつしばらく亀を探してみた。さきほどの滝のもう少し先に行ってみようと思いつき、ゆるゆると泳いでいくと、亀たちがいた。一匹ではなく、何匹もの亀の群れがゆうゆうと泳いでいた。私は慌てふためき、手足をバタバタさせながらその場から離れた。一匹だけならいいが、あんなにもたくさんの海亀に囲まれるのは、そんなに泳ぎが得意ともいえない私にとってパニックだった。水を滴らせながらプールサイドに上がりつつ、滝のほうを見た。水面に亀の姿は見えなかったが、あの下にはいたのだ。子亀が触られたことを親亀に報告して、みんなで私を驚かせようという遊びの逆襲をしに来たのだというストーリーを童話のように作ると面白いのではないかと思い、ひとりで微笑した。  

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by space_tsuu | 2003-11-10 00:00 | 私の心とその周辺

私の中の架空の彼女

「私」の中にもうひとりの「架空の彼女」が存在しているのを想像してみると楽しい。

「私」が二重人格であるという意味ではない。
毎日の生活の中で、周囲の人たちと会話をしている自分や何かに対して行動をおこしている現実の自分と、自分の中にいる自分がなりたい理想の彼女だ。

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時々その理想の彼女が言うことに耳を傾けてみる。
すると、彼女は自分の悪いところを反省したり、新しい発見をするために勇気と熱意を持って行動をおこしなさいとアドバイスをしてくれる。
今まで知らなかったことを教えてくれる。

そして、彼女と私とをとてもいい関係に保つために介在しているものが片岡さんの小説ということになる。

形而下が「私」で形而上が「彼女」だという言い方は正しい言い方だろうか?  

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by space_tsuu | 2003-10-14 00:00 | 私の心とその周辺