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涙が落下していく

ペーパーフィルターの中に、挽いたコーヒーの粉を入れ、熱いお湯を注ぐ。コーヒーサーバーに少しづつ抽出されたコーヒーがたまっていく。ふと、これも重力のおかげのなのだと気づく。あたりまえすぎて普段は忘れているけれど、コーヒーがコーヒーサーバーにたまっていくのも、そのコーヒーをカップに注ぐことができるのも、すべて重力があるからこそなのだ。

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棚の上に飾られているポインセチア。
ハンガーにかけられている冬用の黒いライダースジャケット。
自分の肩にかかる長い髪。
いつのまにか積もっていく雪。
氷り始めた道路を運転していくこと。
浴槽につかること。
シャワーを浴びること。
そして、こぼれ落ちる涙。

加湿器から上方に向けてふわふわと舞い上がる湯気を見ながら、重力について想う。 

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by space_tsuu | 2005-12-18 00:00 | 私の心とその周辺

口紅と雪の結晶

カバーデザインは平野甲賀さんだ。
淡いピンク色の背景に口紅を思わせる紅い色で文字をあしらい、題名と著者の間には、白くくるりと水面の波紋のような模様が小さく描かれている。

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中にある「彼女の心とその周辺」というストーリーは、それだけを一冊にまとめた東京書籍から出ているハードカバーもある。
この本も大好きな一冊で、私のブログの中のカテゴリーの「私の心とその周辺」は、これをもじったものだ。

「自分がいまひとりでここにいること、そしてその自分に自分だけのもの見かたがあることを、彼女はうれしく思います。うれしさは、笑顔になります。淡くせつない微笑から、華やいだ透明な笑い顔まで、彼女のひそやかな域づかいは、どれもみな物語です。」

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扉に描かれた文章を読みながら、片岡さんは、無駄に漢字を多用しない人だなと、あらためてここでも感じる。わざとそう書いているのだろうし、そうすることによって、読む人たちの言葉のイメージを増幅させる効果もあるように思う。
さらに、私も私にしかないものの見方があることに気づき、いつしか微笑が広がっていく。

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by space_tsuu | 2005-12-13 00:00 | 赤い背表紙(短編)

ブルーな一日

目がさめる
かすかに冷たい空気

淡く透きとおるブルーの歯ブラシ
石鹸の香りのブルーのコロン

フロントガラスから見えるスカイブルー
信号がブルーになり、ふたたび発進

ブルーグレーのカップで飲むコーヒー
ブルーマウンテンなら、もっとよかった

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ほんのりグリーンがかったブルーのシャンプーボトル
ブルーのライトが光るクリスマスツリー
ついに書けなくなってしまったブルーのボールペン

透きとおったブルーのロンググラス
ついさっき空になったボンベイサファィアのブルー

深夜に降り出した雪
雪も淡いブルーだったら、どんなだろう?

ゆっくりと目を閉じる
心の中に青い月の光が穏やかに満ちていく

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by space_tsuu | 2005-12-11 00:00 | 私の心とその周辺

いい旅を、と誰もが言った

あとがきから例によって抜粋してみる。

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「なんとも形容しがたいほどに広い宇宙のほんの片隅に、地球が浮かんでいる。その地球のうえに、ぼくがいる。空を見あげれば、あたりを見渡せば、宇宙が見える。すさまじい空間が、体感できる。自分というひとつの出発点のようなものを中心にして、ぼくが持っている空間意識は、こんなふうに宇宙的に広がる好奇心となって、ぼく自身に対して機能している。」
「自分の目のまえにある風景のあらゆる隅々にまで、自分が溶解して注ぎ込まれていくような心地よさや心のやすらぎを覚えるようなことがもしあるとすれば、目のまえにあるその風景は、どこかごく深いところで、自分に対してなにごとかを語りかけているにちがいない。こんな確信が、ぼくにはある。そして、この確信に支えられて、宇宙的に広がる好奇心というような空間感覚を、ぼくはぼく自身の楽しみのために、機能させている。」

こんな楽しみを分かちあえる友人のおかげで、この本は完成したそうだ。

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四つのストーリーがおさめられているが、とりわけ私にとって衝撃的だったのは『彼はいま羊飼い』の羊の去勢の描写だ。文章を読んでいると、まるで自分が目の前で見ているように映像として浮かんでくる。今だったらもっと他のやり方でやっているのかもしれないが、前歯を使って睾丸を引き抜くというやり方に驚愕した。そして、引き抜かれた睾丸は、あとでフライにして食べるという。
これもまた、無限に広がる宇宙の中のちっぽけな地球上でのヒトコマだ。しかし、そこから広がる派生音は知らず知らずのうちに無限に広がっていく。

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by space_tsuu | 2005-12-09 00:00 | 赤い背表紙(短編)