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ドアの遠近法

あとがきに、ローリー・コルウィンの『いつもいい気分』という小説に出てくる花屋の老主人と客の面白い会話と、シドニーの花売りの少年のエピソードについて書いてある。

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およそかけ離れたふたつのエピソードがここでこうして結びつき、誰をも傷つけることのない、そしてなにとも利害関係を結ぶことのない、美しい小さな嘘がひとつ誕生する、とある。
さらに「花が嘘を誘うのだろうか。美しい女性も、嘘を誘うからぼくは好きだ。うまい嘘で最後まできれいにだましとおしてくれるような女性を、ぼくは素敵だと思う。」と続く。

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世の中には嘘が蔓延している。見え透いた嘘、あからさまな嘘。嘘が嘘で塗り固められ、どうにもこうにも収拾がつかなくなってしまった嘘。どれもがどっぷり汚れていて、悪臭を放っていそうなものばかりだ。
せめて、ふとした時に、花のように美しく、害のない嘘をつけるような人になりたいものだ。そして、その嘘には、ほんの少しだけせつなさがプラスされていると、なおさらいい。

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by space_tsuu | 2006-08-18 00:00 | オレンジの背表紙

あいまいな午後の陽射しの香り

この不思議な感触は何なのだろうと、ふと思う時がある。場所や時間がまったく違うのだけれども、ある瞬間に、あ、まただ、この感じと思える空気感にふわっと包まれる瞬間がある。

夏の暑い陽射しの中、明治神宮の生い茂った緑を目の前に見ながら、原宿駅のホームに降り立った瞬間の空気の温度感と午後のあいまいな時間の光。なまあたたかい風を全身に受けつつ、海を視界のかたすみに感じながらモノクロームのアスファルトの上をひたすら前に向かってオートバイを走らせている時に一瞬感じる透明な薄いオレンジ色の光と陽射しの匂い。 休みの朝、時間を気にすることなく起きて、ふと窓を開けた瞬間に、目には見えないけれども確かに部屋の中に漂い入り込んでくる空気の感触。

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場所や時間はまったく別なのにも関わらず、全く同質な不思議な感触を感じることがある。それは何なのかわからないけれども、共通していることは、あいまいな時間とあたたかい陽射しと空気の匂いだ。どんな空気の匂いなのですかと聞かれても、とっさには答えられないが、確かに同じだと感じる瞬間がある。陽射しに匂いがあるなら、あれはもしかしたら太陽の香りなのかもしれない。自分の中では、陽によってあたためられた空気の匂いというよりは陽射しそのものの匂いという感じだろうか。ほんの一瞬自分の鼓動だけが動いていて、周囲の時間が一秒か二秒止まってしまったようにも感じられるあの瞬間。既視感とも違う何か。あの感触を昨日も感じた。いったい何なのか。

ただわかっていることは、その瞬間は私にとって、なにか懐かしくもあり、とても心地良いものだということだけだ。

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by space_tsuu | 2006-08-03 00:00 | 私の心とその周辺