<   2007年 03月 ( 2 )   > この月の画像一覧

撮られる彼女たち

『ふとしたことからカメラを手に入れた僕は、その日から女性の写真を撮り始める。ファインダーをのぞき、シャッターを押し、一瞬のストロボ光の鋭いきらめきのなかに女性の魅力を見る。
そこには、つねに距離があって、体との具体的な接触はいっさいない。でも、やがて迎える不思議なオーガズム---カメラを通しておとなになっていく、僕と8人の彼女たちの物語。』

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裏表紙の文章を読めば、内容を読まなくても、だいたいの想像はつくだろうけれど、このストーリーを読むことによって、読者である私も、彼や彼女たちと同じように成長できるような気がした。

最後のほうで、七人の裸の女性たちの記念写真を撮るシーンが出てくる。ワインの瓶やサラダの巨大なボウル、ピッツアの箱などの後ろに、さまざまなポーズを撮った裸の女性たちがいた。
ファインダーごしでなければ、とうてい直視できないだろうと思いながら彼はシャッターをきる。
この写真は七人の女性たちの記念写真でもあり、彼にとっては、次へのステップに踏み出すための卒業写真でもあったのではないだろうか。

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カバーのイラストは三嶋典東さんという人だ。イラストは、見開きの部分にまでおよんでいるので、せっかくだから、その様子を写真に撮ってみた。

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by space_tsuu | 2007-03-14 00:00 | 緑の背表紙

彼らがまだ幸福だった頃

「ホテルの部屋は、他人によって用意され整えられた空間だね。誰がどんなことに使ってもいい空間だから、はじめからホテルの部屋は、中立なんだ。しかも、さっきみたいに、人が使った形跡のない、整えたままの部屋だと、なおさら中立の空間になる。中立とは、つまり、そこでどんなことがあってもいいということだし、どんなことを起こしたいかは、写真を見る人の自由な夢なんだ」

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あらゆる光のなかでこの女性を見たい、と彼は思った。真夏の青い空の下、海辺の鮮明な光のなかではじめて彼女に会ったとき、彼はそう思った。見せてあげる、と美しい彼女は言う。徹底的に見てほしい、と彼女は思う。彼と彼女と光との、これ以上ではありえないほどに幸福な関係のはじまり。

これは、カバーの扉の文章だ。
こうしてはじまった彼らの幸福な関係は、『彼らがまだ幸福だった頃』というタイトルを重ねて想像するなら、その後は、幸福ではなくなってしまったのだろうかと考えた。

このストーリーの中に登場する彼女は、将来なににもなりたくないと思っている。だから、この中では無職であり、絵のモデルをしていたりする。なににもなりたくないということは、誰かの妻になったりすることも含まれている。自分をできるだけあいまいなものしておきたい、要するに、自分になりたいという。自分に対する枠や限定のようなものを、出来るだけすくなくしてきたいという意味だそうだ。
一方の彼も、彼女と似ている。彼と彼女は似たものどうしだ。
そう考えると、やはり、彼らは、いずれ別れるしかないのだろう。
しかし、彼らにとっては、それでいいはずだ。幸福だったのだから。

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ストーリーが始る前に、若月勤さんのポートフォリオが収録されている。片岡さんは、本の内容と写真が合っていなくて、書き直したい、僕の失敗だったと言っているのを「ぼくのホームページ」の本人による解説のところで読んだ。
写真はどれも素晴しいから、一冊の本の中に、片岡さんのストーリーと、若月さんの写真集が収録されていると思いながら見ると、二倍得したような気分が味わえる。
だから、片岡さんが失敗したと言っても、私にとっては、失敗でもなんでもない。
でも、もし、書き直して再版されることがあるなら、それは、とても嬉しい。

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by space_tsuu | 2007-03-02 00:00 | 赤い背表紙(中編)