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スローなブギにしてくれ

扉の文章には、こう書かれている。
「彼の第三京浜は今日も薄曇り。走ってもとまっても、うんざりの毎日へ、類は友を呼んであいつが現れた。
ヘッドライトを消すと夜明けが来て、いよいよ朝のどんづまり。わかってない奴らは、これを「青春」と呼ぶ。」

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読んでみると、なんとなくyoursにおさめられている一編の詩のようにも感じられる。
しかも、リズム感があるので、心地いい。
こういうストーリーは、よくハードボイルドのように言われるけれど、片岡さんの場合は、生っ粋のハードボイルドとは違って、片岡さん独自の世界があるように思える。
三浦浩さんという方が、あとがきで語っているが、ハードボイルドの最大の要素の一つは"優しさ"であると旧友に教わったそうだ。
そして、その"優しさ"は、この本の中に過不足なく存在していると書いてあった。
片岡風ハードボイルドには、"優しさ"の他にもっと何かが隠されているのではないかと私は思う。
なんだろう。片岡さんの書くストーリーは、すべてにおいて、どうしようもないやるせなさや、そういった言動をドロドロ描くということが全くないから、普通一般に言われているハードボイルドとは違うと感じるのだろうか。
現実をあるがままに書いた写実主義ではなく、地上から数センチほど浮いた所にある光景を、余計なものをすべて削ぎ落として書く写実主義とでもいったほうがいいのか。

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この『スローなブギにしてくれ』の主人公たちは、他の片岡作品に登場する人たちのように、スッキリとクールで、ものわかりのいい大人な主人公ではなく、そのへんのどこにでもいそうな人たちだ。
それとも、こういう少年たちが成長するからこその大人たちなのかもしれない。
だから根底に流れているのは、やはり一貫している。

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by space_tsuu | 2007-06-05 00:00 | 赤い背表紙(短編)