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450キロ間の乾杯

今年も魚座の最後の日がやってきた。
その前夜、私の住む場所から約450キロ真南にいる友人たちと、
片岡さんの誕生日をお祝いした。
片岡さんは焼き鳥が好きだということで、彼女たちは焼き鳥屋にいたそうだ。
だから私も冷酒を買って、おちょこで乾杯をした。
焼き鳥も買っておけばよかったかなと少し残念に思いながら、ほどよく冷えた
冷酒を一口飲んだ。
誕生日をむかえる本人がいないところで、誰かの誕生日を祝うというのも
なかなかいいものだ。

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by space_tsuu | 2008-03-21 00:00 | 私の心とその周辺

せつなさの断面

机の上にあるメモパッドに、彼女は英語の短いセンテンスをいくつか書きとめた。
書いてから読み直してみると、スペルを間違えた箇所を発見したので、その部分を消しゴムで消した。
消しゴムの小さなカスがメモパッドの上に散らばった。
それを指ではらいながら、あ、これは「過去」だ、とふと彼女は思った。

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「現在」という「いま」が、未来の連続だとするなら、その「いま」の後には刻々と「過去」が刻まれては積み重なっていく。
メモパッドに書かれている文字は、すべて「過去」だ。
その「過去」を消しゴムで消してみる。
消しゴムによってからめとられた鉛筆で書いた「過去」は、小さくまるめられて消しゴムのカスに姿を変えた。
そして、それはゴミ箱に入れられ、やがては消えてなくなる。
このようなことをしている自分も、いつかは同じ運命だ。
未来の頂点を極めた自分の後には、膨大に積み重なった過去の地層ができあがる。
その時、その断面を見ることができるなら、面白いかもしれないと彼女は思った。
それには、ほんのりとせつなさが漂っているといい。
そのせつなさの断面を想像しながら、彼女はコーヒーを一口飲んだ。

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by space_tsuu | 2008-03-19 00:00 | 私の心とその周辺

HELP ME SEE THE SKY and another stories 一日じゅう空を見ていた

講談社英語文庫から出ているこの『HELP ME SEE THE SKY and another stories』は、片岡さんをきっかけに知り合った女性からプレゼントしてもらった本だ。
鈴木英人さんのイラストが表紙を飾っている。
この本の第1刷発行は昭和61年6月20日になっている。西暦なら1986年だ。
『南カリフォルニア物語』は1983年の1月となっていたので、鈴木さんが表紙を担当したのは、こちらが先のようだ。

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パラパラとページをめくると片岡さんの文章が、Ralph McCarthyという翻訳家によって英語に直されている。
中の紙の色具合が、ほんのり美味しそうに焼けたトーストのようだ。
紙の色、表紙のできばえ、翻訳されて別のものになっているけれども片岡さんが書いた文章が英語の文字になっている様子が、不思議な感覚をかもし出して今ここにある。
表紙の左上に小さく「一日じゅう空を見ていた」という日本語がある。その文字を指で隠してしまうと、片岡さんが自分自身で何か新しい小説を英語で書いたのではないかというふうに思える。

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片岡さんは英語で小説を書いたことはあるのだろうか。
もしあるなら読んでみたい。もしないなら、一度くらいお願いしてみようか。
どんなふうな返事が返ってくるだろう。
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by space_tsuu | 2008-03-10 00:00 | English

吹いていく風のバラッド

『四○○字詰めの原稿用紙、というものがあります。この原稿用紙で、みじかくて3枚、多くて20枚足らずのスペースにおさめた興味深く美しいシーンを、無作為に連続させてできたのが、この本です。文庫本による、楽しいゲームのひとつです。』

と、扉の文章に書かれているように、そのゲームを私もひさしぶりに楽しんだ。

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カウボーイ・スタイルのコーヒー、暮れていく無人のプラットホームでシャンプーをするライダー、真っ青な空と椰子の木、オートバイの熱いオイル・タンクにガムテープで貼りつけたインスタント・カレー、缶詰に入った輪切りのパイナップルを食べるミュールにショーツ一枚の彼女、夫をリヴォルヴァーで打ち抜く彼女、雨の中、開いたままの傘をわきに置き、小川の中を歩く少年、海風を受けながら会話をする老人と少年、白い雲がひとつだけ浮かんでいる南カリフォルニアの空。
そのシーンのどれもに風は吹いている。地球上のどこへでも風は移動していく。
ふと、風が一番気ままで自由な旅人だということに気づく。この本は、そんな風のような人たちのストーリーだと思う。

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by space_tsuu | 2008-03-01 00:00 | 赤い背表紙(中編)