<   2008年 09月 ( 1 )   > この月の画像一覧

飛行機からながめる宝石

飛行機は定刻に羽田空港を離陸した。
数ヶ月前の同じ時刻にこの飛行機に乗った時は、珊瑚色の夕焼けに雲が染まっているのをながめていた。
しかし、今回、離陸と同時に彼女の眼下に見えたのは、小さなビーズのような宝石たちがちりばめられた湾岸地帯だった。

b0127073_1259140.jpg


数時間前、彼女はアイルランド人とアメリカ人の友達とランチをとった。その前の晩はイギリス人とオランダ人、そして日本の友人たちと地中海料理に舌鼓をうった。
その様子がまるで夢の中の出来事のように思えた。
ゆっくりと旋回する機体の窓から外をながめていると、ふと飛行機の左翼の先端の光と、地上の無数の光が同化して、まるで高度の差がないかのような錯覚におちいった。
彼女はしばらくの間、脳と気持ちとのバランスがうまくとれないような、どこか別の空間に浮遊しているような、あるいは自分の夢の中に現実ごと入り込んでいるような不思議な状態の中にいた。

b0127073_1303592.jpg


自分の部屋にたどり着いても、それはまだ続いていた。食欲もまったくわかず、冷たいビールを喉に流し込んでみた。飲んだ瞬間、自分はものすごく喉が乾いていたことに初めて気づいた。
テレビのスイッチもいれないまま、彼女はしばらくの間、ソファの上によりかかるようにしてじっとしていた。
不思議と眠くもなかった。その感覚は、本当に眠っている時にゆっくりと意識が覚醒してきているがまだ浅い夢の中にいるという状態と似ていた。

彼女はグラスに不規則な形のブロックアイスをいくつか入れ、ホワイト・ラムを注いだ。それを少しづつ飲んでいれば、いつしか夢の中にもう一度引きずり込まれていけるのではないかと期待した。そしてそれはやがて期待どおりになった。
窓の外から月の光が部屋に射しこみ、やがてそれは時間をかけてその角度を変えていった。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
[PR]
by space_tsuu | 2008-09-24 00:00 | 私の心とその周辺