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彼女が風に吹かれた場合

このストーリーは、あとがきの会話の中にもあるように、主人公がより強く「ひとり」になっていくということがテーマのようだ。
肯定的なアイディアを実行するパートナーとして、誰か相手が必要だけれども、結局それは、「ひとり」だということをより強く自覚し、さらにその「ひとり」に磨きをかけ、より深く、よりくっきりと「ひとり」という本質を追求していくためだ。

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好きな会話を抜粋してみることにする。

「九月なかばなのに、完全に秋ね」と、言った。
「うん」
「季節がほんのすこし変わるだけで、おなじ景色でもまったくちがって見えるわ」
「景色の、どこが変わるのかしら」
「見る人の気持ちが、変わるんだ」
「そうお?」
「きっと」
「なぜ?」
「光が変化するから」

ここに書き出しながら外を見ると、すでに秋は知らぬ間にいなくなり、冬になりたての夕方の光がそこにあった。

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by space_tsuu | 2008-11-19 00:00 | 赤い背表紙(中編)

彼のオートバイ、彼女の島 2

「これは映画です。『彼のオートバイ、彼女の島』を原作に、原作者自身が一本の映画を想像のなかでつくり、そのまま描写したという、不思議なこころみです。上映開始のブザーが、聴こえます。」
と扉の文章にもあるように、これは小説ではなく、シナリオだ。
厳密に言うと、シナリオでもないかもしれない。アイディアの提示と言ってもいいかもしれない。

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読んでいると、映画監督の心の中にあるいくつものシーンをこっそりのぞいているようで楽しい。
いつも書くストーリーに少しだけ説明をつけ加え、さらにカメラワークに関しても細かく書かれているので、まるで自分がカメラを持っているような気分を味わえる。
そして読みおえた時には一本の映画を観終わった時のような不思議な感覚を味わうことができた。

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by space_tsuu | 2008-11-17 00:00 | 赤い背表紙(中編)

ブルーの中に浮かぶうろこ雲

コンビニエンスストアから出てきた彼女は、まっすぐに自分のオートバイに向かって歩いた。手に持っている袋をサドルバッグに入れていると、ひとりの初老の男性が彼女に声をかけてきた。
「何cc? 250? 400?」
「800 くらいです」と、彼女は答えた。

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「お、すごいじゃない。ちゃんと乗れる? 俺もオートバイの免許は持ってるんだよ。これから、寒くなるからそんなに乗れなくなるね。雪マークもそろそろ出ていたしね」と、その男性はオートバイのシートをなでまわしながら言った。
彼女がオートバイの後をまわり左側へ向かうと、その男性はオートバイから少し離れた。
彼女はオートバイにまたがり、グローブをはめ、ヘルメットをかぶった。
「これは何ていうバイク?」という質問に、彼女はオートバイの車種を答え、エンジンをかけ、その男性に軽く一礼し、駐車場をあとにした。
仕事場が入っているマンションに着き、オートバイから降り、ガレージに入れようとした時に、彼女はタンクに映るマンションを発見した。
サイドスタンドをたて、リュックからカメラを取り出し、その様子を何枚か写真に撮ってみた。すると青空の中に白いうろこ雲が盛大に広がっていることに気づき、彼女は思わず空を見上げた。
うろこ雲の広がりと同調するかのように、彼女の顔にも同じように笑顔が広がっていった。

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そしてその時、知り合いのブログで読んだ言葉を思い出した。
「voir tout en bleu」
すべてを青く見る、ものごとを楽観的に考えるという意味なのだそうだ。
自分の気持ちのすみずみにまで、そのブルーがしみ込んでいくような心地よい錯覚を彼女は楽しんだ。

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by space_tsuu | 2008-11-15 00:00 | 私の心とその周辺

彼女のグラス

様々な酒のボトルをながめながら、それぞれの酒に合うグラスについて考えてみる。
凍らせたウォッカを注ぐグラス、ブランデーのグラス、赤くてほんのり甘いカクテル。
そして、自分をグラスにたとえるなら、自分はどんな酒に似合うグラスがいいだろうかと想像してみる。

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by space_tsuu | 2008-11-06 00:00 | 私の心とその周辺