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長距離ライダーの憂鬱 -オートバイの詩-

サム・フランシスのことをふと思い出して、片岡さんのどの小説の中に書いてあったのかを一冊一冊最初のページから調べてみた。
どこかの高原の美術館でサム・フランシス展を見たというストーリーだったはずだというのは思い出すのだが、
なかなかそのストーリーに出会わない。
青い背表紙だったかもしれないと、それも調べてみた。
思い込みは見事にはずれた。まさかオートバイの出てくるストーリーだとは思っていなかった。
サム・フランシスの英語によるアフォリズムの小さな本を、主人公は買わずにそこでおぼえてしまう。
私だったらおそらく買っていただろう。というか、今あるなら欲しいくらいだ。
英語で読んでみたい。

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磨かれたステインレス・スティールの楕円のなかに写しとられている自分を、逆の遠近法のなかで楽しむ彼女というのは、長距離ライダーの憂鬱の中でのことだったかとあらためて思った。
もしかしたら他のストーリーやエッセイの中にも出てきているかもしれないが、片岡さんの小説を読んだことのあるライダーならおそらく一度や二度はこんな状況に出会っているはずだ。
もちろん私もその中のひとりだ。
鏡の中の世界に入りこんでしまった、現実だが非現実のような世界にほんの少しだけひたりながら走る。
おそらくまたそんな機会があるなら、サム・フランシスのアフォリズムも同時に思い出すことになるかもしれない。

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この小説を久しぶりに読み直すと、主人公の気持ちの動き方があまりにも自分と似ていることに驚いた。
ずっと片岡さんの小説を読んでいるせいで、自分がそういう考え方に近づいたのかと一瞬思ったが、決してそうではない。
もし、誰かにあなたという人はどんな人か説明してくださいと言われたら、この本をだまってさし出してしまうかもしれないと思いながら苦笑した。

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by space_tsuu | 2009-09-23 00:00 | 赤い背表紙(中編)