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黒い屋根、グレーのボディに七色の虹

何かが大きく確実に、まるで自分では想像していない方向に向けて変化してしまったと彼女は感じていた。
普段なら感じることのない、どこか不安な得体のしれない感情を心の片隅に感じながら、彼女は本棚へ向かった。
何冊か重ねておいてある絵本の中から彼女は薄くて大きめの一冊の絵本を取りだした。
表紙には、どこか不安げな表情を浮かべた、ふたりとも丸顔の夫婦が寄り添っていた。そのふたりの間から、彼らの不安の原因である不気味なきのこ雲が立ち上っている。
その表紙をめくり、ぱらぱらと中を見ていくと、カラフルだった色合いが次第にくすんで汚れていく。
パレットにとった単色づつの絵の具を無造作にかき混ぜていくように、自然の美しさを人間が汚していく。
裏表紙には、ある瞬間をコマ送りのように細かく分けて夫婦の足の裏が描かれている。そしてひと言「blimey」という言葉が吹き出しにある。

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暖かい陽射しを感じてふと、窓の外を見てみると、久しぶりに見た雲ひとつない青空が広がっていた。
どこを走ったらこんなに汚れてしまうのかというくらいに泥だらけになっていた車をやっと洗えると思いつき、彼女はガレージに向かって階段を降りた。

彼女の心とはうらはらに、暖かい陽射しとどこまでも澄み切った深い青空が幸せの象徴のように彼女の頭上に広がっていた。
ガレージからオープンカーを出し、エンジンを切って、勢いよく車に向かってシャワーをかけ始めた。
ギャラクシーグレーマイカという色のボディを背景に細かい水しぶきの中に彼女は小さな虹を発見した。
水をかけるふとした角度によって現れる、そのきらきらと幻のように輝く七色の虹を見つけた瞬間、ここ数日忘れていた小さな幸せにも似た安堵感を覚えた。
大きく変化したどこへ行き着くともしれない流れの中に、これだけは決して変わることのないものが自分の中に確かにあるのだということを確認できて、彼女はほんの少し嬉しくなった。そしてさらに車にシャワーの水をかけ続けた。

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by space_tsuu | 2011-04-08 00:00 | 私の心とその周辺