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浴室で深呼吸

秋の金曜日の夜、夕食を食べないまま十時近くまで仕事をしたあと、食後酒を一杯だけ飲めば、すくなくとも心理的にはきちんと夕食をとったのとおなじを効果を得ることができるのではないかと考える彼女。
そしてホテルの部屋で、三十回連続で四セット、あいだに適当なインタヴァルをはさみつつ腕立て伏せをする。仕上げは片腕だけで交互に五回ずつ。

フランス語で読んだ恋愛小説の話。ひとりの男性がひとりの女性の半分を愛する物語。彼女は、美しい素敵な人で、まちがいなく女なのだけれども、男のような部分も、心の内部に持っている。それが彼女の右腕にあらわれていて、その男性的な部分に彼は強くひかれているという内容。


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ジョルジェ・デ・キリコの絵に関する話。

セロリの茎と言われている部分が実は正確に言うと、セロリの葉であること。

今の状態は?と 聞かれて次のように答える彼女。
「ちょうど、バランスがとれているの。一方に過去があって、その反対の方向に、将来があって、その両方が、いまちょうどバランスをとって、平衡に釣り合ったとこだわ。これまでと、これからが、左右対称なの。」

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パラパラとページをめくりながら、もう何年も前に読んだストーリーの中に、無意識とはいえ、いかに今の自分が影響を受けている部分が多いかを発見して呆然となる。
そっくりそのまま自分の行動が影響を受けているというわけではないにしろ、興味を持ったものや、心の動き方、ものに対する考え方の中に何かしら小さな断片として組み込まれているようだ。
なんらかのシチュエーションがあって、その時にこんなふうに思ったり考えたりするのは、ここから来ていたのかもしれないと再発見するのは、昔遊んで忘れていたおもちゃ箱のふたを開けて見てみるようでなんだか楽しい。

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カバーをめくったところに若き日の片岡さんの写真がある。誰が撮ったものだろうか。陽に焼けた両手を頭の上で組んで、どこかを見ている。海だろうか。何かをじっと見るというよりは、何かに思いをめぐらせているのかもしれない。
きっと頭の中では、様々なアイディアの断片が、海の上に浮かぶ雲のように浮かんでは組み合わさって形を変えているのだろう。

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by space_tsuu | 2012-04-24 00:00 | 淡いオレンジの背表紙

パラッド30曲で1冊

これは片岡さんの本の中でも特に大好きなもののひとつだ。ショートストーリーを「バラッド」にたとえて30編ある。
この30編のタイトルをながめているだけでも楽しい。どこか片岡さんが書く詩を読んでいるようにも思える。
片岡さんの言葉の選び方に感銘を受け、普段の生活の中でも様々な状況に応じて無意識に言葉を探し出し、組み合わせて脳内一人遊びをしている自分に気づくことがある。
「林檎が燃える、あるいは飛ぶ」というタイトルがあるが、この本にめぐりあっていなかったなら、私の頭の中で、林檎が燃えたり飛んだりする様子なんて想像することができていただろうか?
もともと私は言葉遊びが好きなようだ。子供の頃におぼえた「じゅげむ」だけは今でも言える。
大人になった今は、片岡さんのおかげで、さらに言葉遊びに拍車がかかってしまった。
とても楽しい。

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この本は、間々に片岡さん自身が撮った写真が添えられている。
私の大好きな形体だ。
スペアミントの中身を出して並べて撮った写真。小さな白い昼月。ホテルのベッド。空、庭に咲いている赤い花。青空に飛行機雲。銀色に光る富士山の模型。
最近、片岡さんは東京の街のあちらこちらを撮って写真集も何冊か出しているが、この「バラッド30曲で1冊」に載っているような写真もまた見てみたい。
片岡さんはきっと「謎」を撮る人なのだ。「謎」でなければ撮る必要はない。カメラのファィンダーごしに「謎」をじっくり観察し、あるいは瞬間的に構図を決め「謎」を切り取る。
そして切り取ったあとの「謎」を見ながら、さらにその「謎」について思いをめぐらせる。
「謎」についてあれこれ考えていると、私もいつしかその「謎」にとりこまれ「謎」の一部となっていく。

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by space_tsuu | 2012-04-21 00:00 | 赤い背表紙(短編)

めざめても夢の中

白いボディーに赤い鶴
ブラックコーヒーと白い雲
青空という仮想空間
レモンペリエの緑色
自分とはなにか
ふれているものすべて
夢のまた夢
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東京という夢の出来ばえ
目覚めたのは何時でしたか
カラフルとモノトーンのあいだ
赤い色だけ取りだしてみる
現実とはなにか
語られるものすべて
この夢のあとさき
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額のなかの謎のほほえみ
ほつれ髪の彼女
アコーディオンとコントラバスのタンゴ
にわかにかきけむり土砂降り
稲妻は青いですか
聞くもの見るものすべて
めざめてもまだ夢の中

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by space_tsuu | 2012-04-17 00:00 | 私の心とその周辺