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緑の瞳とズーム・レンズ(平凡社)

あとがきに、「これまでの価値観から、時間は引き剥がされつつある。そして、まったく別な質を持った価値観に、貼りなおされつつある。大転換と言ってもいい。別世界の登場と言ってもいい。緑色の瞳の助けをかりて、ズーム・レンズごしに、僕はそのような世界を見た。そしてそのような世界の時間は、まだ大部分は未来のなかにあるけれど、一部分は早くも遠い過去にまで到達している。」とある。


これが書かれたのはいつだろうと思い見てみると、1990年7月16日 初版第1刷とあった。

今から約30年前だ。自分の30年前を思い起こしてみて、ああ、あの頃か、それなら、私個人にとっても大転換期だった。

それまで勤めていた美容室を離れ、自分ひとりだけでやっていこうと思い、それを実行に移した頃だ。

さらにそこから30年たった今、世界中がまさに大転換期にある。

そんな時間の流れを想像していたら、上下左右のない時間の螺旋階段が、ぐるぐると足元のずっと下から頭上にむけて伸びていくように感じた。

私はまるでエッシャーのだまし絵の中に立っているかのように思えた。


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前回の赤い背表紙の『緑の瞳とズーム・レンズ』は、平成四年十月十日初版発行となっていたので、西暦でいうと1992年だ。

このハードカバーの本より2年あとに刊行されている。書かれている内容は同じで、そちらに写真は載っていないが、こちらのハードカバーには、「風景―まえの世代からの贈物」と題して、佐藤秀明さんと片岡さんの写真が70枚も載っている。

これだけでも、ちょっとした写真集になるではないか。一枚一枚におふたりのコメントまでついている。

何枚かピックアップして載せておこう。


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# by space_tsuu | 2021-04-16 00:01 | ハードカバー

タイトル別

■ 赤い背表紙(短編)


緑の瞳とズーム・レンズ


花なら紅く

恋愛小説3

恋愛小説2

パラッド30曲で1冊

恋愛小説

ドライ・マティーニが口をきく

ふたとおりの終点

マーマレードの朝


夕陽に赤い帆


私はいつも私


雨のなかの日時計

微笑の育てかた

ラジオが泣いた夜

今日は口数がすくない


星の数ほど

波乗りの島 - ブルー・パシフィック・ストーリーズ -


一日じゅう空を見ていた

缶ビールのロマンス


散ってゆく花

誰もがいま淋しい

最終夜行寝台

ボビーをつかまえろ

ボビーに首ったけ

私は彼の私


人生は野菜スープ

嘘はほんのり赤い

花なら紅く


五つの夏の物語


物語の幸福

寝顔やさしく


狙撃者がいる

花のある静かな日

ふたり景色


離婚しました

俺のハートがNOと言う

いい旅を、と誰もが言った

口紅と雪の結晶


美人物語

スローなブギにしてくれ


5Bの鉛筆で書いた

■ 赤い背表紙(中編)

彼女から学んだこと


タイプライターの追憶

彼のオートバイ、彼女の島


生き方を楽しむ

and I Love Her

魚座の最後の日


友よ、また逢おう

心のままに

敍情組曲

結婚のヒント


Ten Years After

少年の行動

彼女が風に吹かれた場合


彼のオートバイ、彼女の島 2

あの影を愛した

恋愛生活

彼らがまだ幸福だった頃

吹いていく風のバラッド


長距離ライダーの憂鬱 -オートバイの詩-


■ 赤い背表紙(長編)

幸せは白いTシャツ


限りなき夏1


湾岸道路

ときには星の下で眠る

ボーイフレンドジャケット


■ 赤い背表紙(エッセイ)



盗用を禁ず だじゃれ笑学校

意地悪ポケット本

■ essay

昼月の幸福

■ 詩集

メントール・ユーカリプト

■ collaboration

キス・キス・キス

Ambient Hawaii

カヌーで来た男

■ English

HELP ME SEE THE SKY and another stories 一日じゅう空を見ていた


■ Kadokawa-Novels

■ KADOKAWA GREETING BOOKS

THE FOUR OF US 最愛の人

■ハードカバー



■その他

paperback (Switch Special Issue) Late Winter 2002 vol.4


■ 私の心とその周辺

私の中の架空の彼女

海亀と一緒に泳いだ

ストリチナーヤでバーバラ

不思議な香りのするウォッカ

キャンベルの赤い缶

お気に入りのバーで、素敵な夜を


ホテルという異次元空間

オートバイとオープンカー

理想的なあり方


飛ばされながら月を見た

夏の海とメープルシュガー

雨の壁、霧の壁、虹のふもと


モノクロ写真に紅一点

片岡さんの写真展

午後の海とブルーハワイのラムネ


コーヒー一杯の雨雲


ブルーな一日


涙が落下していく

透明になってついていく

少年かもしれない


屋台の中華そばのブルース


「コーシー」の想い出

ある一瞬の物語

夜という宇宙空間


私の空の心象画

上り坂の地平線

宝物に伸びる影


雲の楽しみ方の一例

すべては自分次第


水たまりの白日夢

あいまいな午後の陽射しの香り

晴れた夜、RainyDayで


雲の上の未来


せつなさの断面

450キロ間の乾杯

気温24度、風力タービン

表参道の地下鉄から

先月は空からながめた

ベージュの幌に雨の音

飛行機からながめる宝石

いつか見た夢

彼女のグラス

ブルーの中に浮かぶうろこ雲

永遠の島

いつの間にか消えた

「形」になった記憶

答えは「動的平衡」だった

白いヘルメットのアメリカ国歌

黒い屋根、グレーのボディに七色の虹

直径1インチのスカイ・ブルー

目ざめても夢の中

ハーレーの影は私

# by space_tsuu | 2021-04-16 00:00 | タイトル別

緑の瞳とズーム・レンズ

私は、片岡さんの本は、出版されたら、または見つけたらすぐに買うのだが、この角川版の『緑の瞳とズーム・レンズ』は、かなりあとから買ったものだ。

出ているのは知っていたけれど、その前にハードカバーの『緑の瞳とズーム・レンズ』を持っていたからだ。

けれども、ある日思い直して、やはり持っていたいと思い手に入れた。

表紙の写真を見るたびに、どうして買わなかったの?と、もうひとりの自分がささやいてくる。

こういう写真がとても好きで、感化されて今でもホテルに泊まると、まずは何よりもさきに部屋の写真を撮るというクセまでついてしまった。


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ブログに書くために、手にとってみると、あらためてこの本の良さに気づく。自分の手に持った感触、ほどよい大きさ、カバーのなめらな質感、ページをめくる時の心地いい感覚。

最近は、iPadで本を読むことも多くなったが、やはり紙の本はいい。五感にうったえかけてくる。

まだ買い忘れている本はあるはずだ。

また、どこかで見つけたら、買うことにしよう。



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# by space_tsuu | 2021-04-02 00:01 | 赤い背表紙(短編)

LONESOME COWBOY

ある日、「LONESOME COWBOY」という写真集がVOYAGERさんから届いた。

「サポータってなんだろうね、よくわからないな」という片岡さんの一言から、佐藤秀明さんのアメリカ行き『ロンサム・カウボーイふたたび』につながって、そのお礼としての写真集が、片岡義男.comのサポータたちに届けられたのだ。

しかも無料で。

なんという素敵なプレゼントなんだろう。

なにげない毎日を送る中で、こんな素晴らしい出来事が起こるなんて、そうそうない。

佐藤秀明さん、片岡義男さん、そして片岡義男.comに関わっている全てのみなさんに、本当に感謝します。

ありがとうございます。


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この写真集は1967年から2017年までの50年間、佐藤秀明さんが撮り続けた写真から、選びに選んでできた一冊だ。

ページを開くとすぐに、3時間以上もかけて書いてくださった佐藤さんのサインがあり、さらにめくっていくと、アメリカで最も孤独なハイウエイとしてライフ誌に取り上げられたというネバダの50号線の写真がある。

道路の真ん中に、イメージの中で自分を置いてみたが、圧倒的な風景の前に、それはすぐさまかき消されて、その雄大な自然の中にとりこまれていくように感じた。

けれども、ここに実際に立ってみたいという気持ちは、ふつふつと湧き上がってくる。


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そんな気持ちになりながらページをめくっていくと、ラスベガスにある巨大な白いハイヒールの写真に出会った。

巨人になった私が、この大きなハイヒールをはいて、ネバダの50号線のど真ん中に立ち、前方にそびえる山々をながめたら、とても気持ちよさそうだ。

昔と変わらず、そこにそのままあるものもあるそうだ。たとえば、このビリヤード台のように。

私も行ってみたい。この目で見てみたい。


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「なんということもない、ごくあたりまえのアメリカの人々が、ごく普通の町なみや風景のなかにいて、日常の生活を送っている。そこへぼく自身を置く。普通の人々が平凡な風景のなかでくりかえしている生活を感じとるためだ。そして、ぼく自身をも含めて、その光景ぜんたいを、もうひとりのぼくが、別のパースペクティヴをもって描いていく。こういった、パースペクティヴの移動ないしは転換は、仮設をこえて、感覚のよろこびになりうる。」と、片岡さんは『ロンサム・カウボーイ』のなかのあとがきに書いている。


この写真集では、そうしたごくあたりまえのアメリカの人たちの日常も見ることができる。片岡さんが、そうした風景を書くことによって描写し、よろこびを感じたように、佐藤さんは写真を撮ることによって、様々なことを感じたのだろう。

その一端を片岡義男.comの「写真は語る」で読むことができる。


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「LONESOME COWBOY」と声に出して言ってみると、私は1982年のパイオニア・コンポーネント・カーステレオ Lonesome Car-boyのテレビCFを思い出す。

スペルを見ると、Cowboy(カウボーイ)ではなく、Car-boy(カーボーイ)だ。

探してみると、すぐにYouTubeで見つけることができた。

バドワイザーの缶を淡々と打っていくシーンに片岡さんの、これも淡々と、しかもテンポよく発せられる言葉が重なっていく。

「荒野はどこへ行ってもふるさとだ」というセリフを聞いて30年以上の時間がふとどこかへ消えたように感じた。



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最後に、この写真集の最初のほうに書いてあった『空のはた織り機 テワ・プエブロ族の詩』(金関寿夫「アメリカ・インディアンの詩」中公新書より)から、少しだけ抜粋しておこう。



朝の白い光を縦糸にして

夕方の赤い光を横糸にして

降る雨を縁(ふち)ぶさにして

空にかかる虹を縁(ふち)どりにして


わたしたちに光の衣服(ふく)を縫ってください


# by space_tsuu | 2018-10-19 00:00 | 写真集(佐藤秀明)

ハロー・グッドバイ

この本は、集英社文庫のコバルト・シリーズから出た一冊だ。

ずいぶん昔に、片岡さん以外のコバルトシリーズの一冊を読んだ記憶があるが、タイトルも作者も忘れてしまった。ただ、青春だった頃の気持ちをふわっと思い起こさせる一冊だったような気がする。

この『ハロー・グッドバイ』には三つのストーリーが収められていて、主人公たちは高校生だ。この本を読んだときは、私はもう働いていた。

もし学生時代にこの本に出会っていたなら、今の私とはまたほんの少し違う自分になっていたのだろうか。


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最初に読んだときは気がつかなかったが、あらためて読み直していて、面白いことにひとつ気がついた。

『ハロー・グッドバイ』の主人公の名前が美夜子と由理子なのだが、お互いをミーとユーと呼び合っている。これはもしかしたら、英語のmeとyouなのではないか。そこから逆に名前をつけたのではないか、と一人想像して遊んでみた。なぜなら、片岡さんは、いつも主人公の名前をつけるのにひと苦労するのだと、どこかで読んだ記憶があるからだ。


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片岡義男さんと佐々木敦さんの『スローなデジにしてくれ 「片岡義男の全著作電子化計画」』という対談の中で、片岡さんという人間は何なのかというと、ある知人から「元祖ヤンキー」だと言われたそうだ。

オートバイにサーフィンだから、そう言われればそうかもしれない。片岡さん自身が、「スローなブギにしてくれ」の主人公も「白い波の荒野へ」の主人公もヤンキーなんですよ、と言っている。

単に表面的な部分がヤンキーだと言っているのではなく、そのときはそれでうまくいっているから、それでいく、他のことはやらないといったメンタリティーなのだそうだ。

短編はヤンキーに向いていて、今自分はここでこれをやりたいからやっているんだという話を書けばいい。要するに、理想型の「いまこの瞬間」を短編で書いているということなのだと、対談では語っている。

この『ハロー・グッドバイ』の中の『箱根ターンパイクおいてけぼり』の挿絵に、ヤンキーのイラストがあったので、載せておこう。

これで、ますます「片岡さんは元祖ヤンキー説」を実証することになったようだ(笑)



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# by space_tsuu | 2018-09-13 00:00 | オレンジの背表紙