ハロー・グッドバイ

この本は、集英社文庫のコバルト・シリーズから出た一冊だ。

ずいぶん昔に、片岡さん以外のコバルトシリーズの一冊を読んだ記憶があるが、タイトルも作者も忘れてしまった。ただ、青春だった頃の気持ちをふわっと思い起こさせる一冊だったような気がする。

この『ハロー・グッドバイ』には三つのストーリーが収められていて、主人公たちは高校生だ。この本を読んだときは、私はもう働いていた。

もし学生時代にこの本に出会っていたなら、今の私とはまたほんの少し違う自分になっていたのだろうか。


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最初に読んだときは気がつかなかったが、あらためて読み直していて、面白いことにひとつ気がついた。

『ハロー・グッドバイ』の主人公の名前が美夜子と由理子なのだが、お互いをミーとユーと呼び合っている。これはもしかしたら、英語のmeとyouなのではないか。そこから逆に名前をつけたのではないか、と一人想像して遊んでみた。なぜなら、片岡さんは、いつも主人公の名前をつけるのにひと苦労するのだと、どこかで読んだ記憶があるからだ。


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片岡義男さんと佐々木敦さんの『スローなデジにしてくれ 「片岡義男の全著作電子化計画」』という対談の中で、片岡さんという人間は何なのかというと、ある知人から「元祖ヤンキー」だと言われたそうだ。

オートバイにサーフィンだから、そう言われればそうかもしれない。片岡さん自身が、「スローなブギにしてくれ」の主人公も「白い波の荒野へ」の主人公もヤンキーなんですよ、と言っている。

単に表面的な部分がヤンキーだと言っているのではなく、そのときはそれでうまくいっているから、それでいく、他のことはやらないといったメンタリティーなのだそうだ。

短編はヤンキーに向いていて、今自分はここでこれをやりたいからやっているんだという話を書けばいい。要するに、理想型の「いまこの瞬間」を短編で書いているということなのだと、対談では語っている。

この『ハロー・グッドバイ』の中の『箱根ターンパイクおいてけぼり』の挿絵に、ヤンキーのイラストがあったので、載せておこう。

これで、ますます「片岡さんは元祖ヤンキー説」を実証することになったようだ(笑)





『ハロー・グッドバイ』


原田美夜子

原田由理子

清水治夫

川崎吉蔵

野原正彦

丹野信太郎

小倉秀明

紺野圭介

坂本敬子



オリーブ色のセリカ

あずき色のローレル・ハードトップ

小型トラック


ボーイング七三七


「最高の時がくるから、その時を待ちなさい」


『スシャール』という名のコーヒー・ショップ

『ロケット88』(アメリカふうに飾りつけたスナック

メンズ・ファッション『SAKA』

パンケーキの店


モーツァルトのピアノ・ソナタ


コーヒー

サンドイッチ

ハンバーガー

くだもの

ソフトドリンク

チーズバーガー(テーブルに広げたナプキンのうえに、そのチーズバーガーをふたつに開いた。カラシとトマト・ケチャップのビンを両手で取り、そのどちらをも、たっぷりとかけた。)

バナナ

チェリー・コーク

お茶

パンケーキ

ペパーミント・ロック

ウイスキー


十二色のサインペン


模型のラジオ・コントロールの飛行機




『砂に書いたラブレター』



坂田敬子

母親

店長

ふたつ年下の弟

ヒロコ

スミエ

イケモト・マキオ(真木男)

リカ


お茶

ブドウのジュース

アイス・コーヒー

コーク

ハンバーガー・サンドのダブル・デッカー(大きな四角い食パンを厚く切ったのを三枚、こんがりとトースターで焼く。1枚目のパンにレタスとトマトを敷き、よく焼いたハンバーガーをのせる。二枚目のパンをその上にかさね、もう一度、レタスとトマトを敷きつめ、三枚目の食パンをのせる。

ビーチボーイ・サラダ

淡いブルーのソーダ水


白いダットサンの一トン・トラック

赤いコスモ


いい感じにくすんだ赤いサーフボード

青いボード

サーフボードの模型


「本を読みなさい」

「なぜ?」

「一日に一度は、机にすわって本を読みなさい。表情がひきしまります」


「サーフボードが欲しい。サーフボードってどうやってつくるの?」

「発泡ポリウレタンの板を、自分の波乗りの体験を理論化したうえで一本のサーフボードのかたちに表現するんだ。自分でつくりだしたかたちに、ポリウレタンの板を削るのさ」

「自分で?」

「そう」

「手づくりなのね」

「そうだよ。削ってかたちをととのえたら、グラスファイバーの布をかけて、その上から触媒を入れた合成樹脂の液をかけて、塗りこめるんだ。おなじ作業を二度くりかえす。ボードの裏とおもての合わさるところを処理して、こまかいサンドペーパーでボードぜんたいをなめらかに仕上げる」

「色は?」

「合成樹脂の中に色素を溶かしておくんだ」

「ペンキを塗るのかと思った」

「ずっと昔はね、そうだった。木を削ってつくってたから」



太陽が、紅く丸く、海に接しようとしていた。空には、綿をちぎっては薄くのばしながら敷きつめたような雲がいっぱいだった。雲のすき間から、淡く色のさめた青空が見えた。夕陽を下からうけて、雲は赤っぽいオレンジだった。


うれしさと、悲しさと、つらさが、いま敬子の胸の中でごったになっている。うれしさは、澄みきった、しかも熱いうれしさだ。心からうれしい。悲しさは、底なしだ。つらさは、なににたとえたらいいだろう。



『箱根ターンパイクおいてけぼり』


山根秀明

伊東広美

西野由香利

庭村健太郎

数学IIの、眼鏡をかけた小柄な教師

杉本先生

恵子


カワサキ650RS=W3

350ccのオートバイ

スポーツ・タイプの四輪

燃料タンクを赤と黒に塗り分けたW3(光るクロームの部分や、黒く塗ったフレーム)

トライアル車のような雰囲気づけをした、かわいらしい50ccのオートバイ

W1

赤いコスモ

白い小さな車

白い小型のセダン


白いジェット型のヘルメット

単眼のゴグル

くすんだオレンジ色の皮つなぎには、両わきにブルーのストライプが走り、頑丈そうなブーツは黒皮、そしてロードレース用の薄いしなやかな皮の手袋がブルー


モーツァルトのピアノ曲


熱くて苦いコーヒー

ピザ

ホット・レモン

肉まんじゅう

スープ





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by space_tsuu | 2018-09-13 00:00 | オレンジの背表紙
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