アップル・サイダーと彼女

この本は片岡さんそのものだ、と言っていいだろう。あとがきで本人がまぎれもなくぼくであり、ぼくがぼくであることの結果や証明のごちゃまぜであると言っているから、そうなのだろう。あとがきが一九七九年十月とあるので、その時までの片岡さん自身だということになる。
朝の八時から午後の四時すぎまで空の雲をながめてすごし、午後が夕方に変わっていこうとしている時間にこの「あとがき」を書いたそうだ。
「あとがき」というふうになっているけれども、私にとっては、「あとがき」という名のエッセイのひとつに思えるぐらいだ。

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この中に書かれている話はどれも素晴しい。どれも感銘をうける。どれかをひとつあげてくださいと言われても困るので、トランプのカードを一枚抜くようにページを開き、ひとつだけ選んでみた。
そのページは「コンドルは滑空していく」というタイトルだった。
『ぼくはコンドルという鳥に、すこし興味を持ってしまった。』という出だしで始まるエッセイなのだが、これを読んでしまうと、「私はコンドルという鳥に、ひじょうに興味を持ってしまった。」と言わざるをえないくらい引き込まれてしまう。
去年たまたまアマチュアのフォルクローレを聴いたのだが、その時に演奏で使っていたケーナはコンドルの主翼の骨で作られていたのだと今さらながらに気づいた。私は「コンドルは飛んで行く」という曲が心が揺さぶられるくらい大好きで、いつも聴くたびにぼうぜんとなるくらいなのに迂闊だった。自分の迂闊さを少しでも取り戻すために、数百万年も昔からすこしも変化していないというコンドルの骨でできたケーナを吹いてみたいという衝動がわきおこってしまった。

● 2005/4/27に書いたが、2018/8/31に、Moreをあらためて追加。




- - - オートミールの朝食


オートミール

メイプルのシロップ

砂糖はぬきにしてミルクだけ

コーンフレークスをひとつかみ

カンづめのフルーツカクテル

ダイスに切ったピーチやパイナップル、それにディズニー・カラーのようなピンク色に染めたチェリーのハーヴズがシロップづけになったもの

舌を焼く熱いブラック・コーヒー


- - - トーストにベーコン・アンド・エッグス、そして紅茶


トースト

ベーコン・アンド・エッグス

オレンジ・ジュース

熱い紅茶

クレソン


まずトーストだが、パンの良し悪しや性質はおくとして、切ったときの厚さと焼きかげん、そして皿に置いたときの感じが大切だ。厚さは一センチあるかないかという程度にし、ほどよく焼き、二枚をおたがいに半分くらいかさなりあうようにして皿に置く。

ベーコン・アンド・エッグスは、タマゴをふたつ使い、サニーサイドでとおす。ベーコンは塩辛すぎないやつを、カリカリにはしないで、火がよくとおったという感じにおさえておく。油がでるから、それは捨ててしまう。

クレソンはそのままむしゃむしゃと食べる。トーストにはバターやマーガリンをつけてもいい。つけなくてもいい。ジャムやマーマレードは、いらない。

むつかしいのは紅茶だ。レモンもミルクも砂糖も、なんにもいらない。熱くて、しかも濃すぎず薄すぎもせず、香りを逃さないように。ポットやカップに注意するといいようだ。


- - - 彼女の部屋に文庫本


ビリヤード

ローテーション

エイト・ボール


お茶

カレー・パン

牛乳

ハイボール

ミドリ色やピンクの飲みもの

寿司


サントリー・バー


『千曲川のスケッチ』

『車輪の下』

『放浪記』

『坊ちゃん』


- - - 少年とラジオ


アメリカ製のテーブル・ラジオあるいはポータブル・ラジオ

モトローラのポータブル・ラジオ(鮮明なグリーンとおなじく鮮明な黄色の塗り分けだった)

ゼニスのポータブル(あずき色)

アドミラルのポータブルのラジオ・フォノグラフ(レコード・プレーヤーとAMラジオがいっしょになったもの、あずき色)

GEのテーブル・ラジオ


FENのコメディー

ジャック・ペニーのロチェスターやアンダテイカー

グルーチョ・マルクス

マーシャ・メイスンのような女性職員


- - - 少年たちの共和国


「おもしろブック」

『少年王者』

「冒険王」


- - - 少年食物誌


タコ

イカ

ナマコ

カニ

ウニ

サシミ

塩焼き

ただゆでるだけ

イワシ

カンづめ

箱づめ

ビンづめ

ピーナツ

ビンづめのピーナツ・バター

ハム・アンド・エッグス

白いタマゴ


網にかかつたばかりの、陽光をうけとめて銀色に輝きつつピチピチと指さきにはねるイワシの、しっぽのちかくにナイフで斜めに切れ目をつけ、そこを指さきでつまみ、ひきはがすようにふたつに裂いてしまう。小皿の酢じょうゆをちょっとつけて、食べる。背骨をひきはがし、内蔵をとり、もういっぽうもおなじように食べる。


タマゴのとがったほうを小石で叩いて小さく割り、割れたかけらをとりのぞき、小さな穴をあける。

この穴に口をあて、タマゴを生のまま、吸いだすのだ。ヌラヌラの白身をほぼ吸いおえたところで、吸い口から内部へしょうゆをすこし垂らし、ハシを突っ込んでかきまぜる。


- - - 深まりゆく秋です


オートバイ


ミネラル・ウォーター

梅干し

干し柿

秋の婚礼の宴にでた寿司の残りもの

山菜ソバ(生卵の黄身)

魔法ビンの番茶


北海道の屋台のトウモロコシ(一本はその場で食べ、もう一本はアルミフォイルにつつんでもらい、シリンダー・フィンのあたりのどこか冷却効果の落ちないようなところにはさんで走り、二時間くらいあと、エンジンの熱であつく保たれのを、誰もいない草原にひとりすわって食べる。


- - - 4サイクル・ツイン


メグロ・スタミナK2

カワサキ650W1

メグロ・セニアのT1とかT2

キャブトンRV

オートビットH


4サイクル単気筒ないしはツイン

排気量は250から500くらい

シートはサドル型


よく着こんだ皮つなはぎにツーリング・ブーツ

ジェツト型のヘルメット

単眼のゴグル

手袋


フェンダーの銀色の輝き


- - - オートバイはぼくの先生


カフェレーサー



―真夜中のオートバイ


オロナミン・ドリンク


- - - 深夜の地獄めぐり


- - - トリップ・カウンター・ブルースだってよ


生ゴムのグリップをとおして、ハンドル・バーを握った両手に、バイクの重さのすべてを受けとめる。うれしいような、こわいような、不思議な気持ちだ。おそらく、こわいのだろう。


人と話をしたい。でも、もうすこし、ひとりで黙っていたい。


- - - 故郷へ帰りたい


ディーゼル・トラック

オートバイ

濃いグリーンの幌でおおった十一トン・ディーゼル

乗用車

コンテナが銀色に輝くトレーラー・トラック

2000CCのかったるいハードトップ


ポテト・チップ

カン入りのソーダ水

コーヒー


―あの夜はホワイト・クリスマス


炎があかあかと燃える暖炉のまえで、火にかざして焼いたマシュマロにチョコレート・ソース

熱い紅茶


- - - 雨と霧と雲と


- - - 悲しき雨音


よく熟したカボチャの、赤っぽい色とよく似た色の路線バス(窓のすぐ下を、ベージュの幅広いストライプが走っている)


ケッズの白いスニーカー


アメリカン・コーヒー

チリソースで溶いたサワクリームとポテトチップス

クィーン・メリー

紅茶


まっ白くて大きなサンダーバード


コバルト・ブルーのインクでピリオドを丸く書く


- - - 都会の夕暮れ


エレベーター・ガール


- - - ミスタ・ロンリー


『アロハ・オエ』

『ハーバー・ライト』


玲子


熱いコーヒー


バンダナ


- - - ノートブック


五月はじめのタヒチ


ホワイトラムのソーダ割り


オレンジ色のボールペン

簡素で実用的で、なおかつ持ち物としての楽しさをたたえた、すこし分厚いノートブック(厚紙の表紙の角が丸く落としてあり、洒落た雰囲気はなんともいえない、いいものだった)


- - - タイニー・バブルス


パペーテの町


ジャック


フォルクスワーゲンの乗り合いバス


アメリカン・ソーダ


- - - ハワイのいなり寿司


「オカズ屋」


いなり寿司のことをライス・コーン(米を円錐形に握りかためたもの)

紅茶

トースト

マーマーレード

ベーコン・アンド・エッグス


―ブルー・ハワイ


マーシャル

ギルバート

ラビット

エディ

ビル

ハロルド(徳光)

シンシア

徳一


バーベキュー

ビール(プリモ)

ポプコーン


スティール・ギター

ウッド・ベース


レンタル・カーのまっ青なマーキュリー・クーガー



- - - チャタヌーガ・チューチュー


コーヒー

ハム・アンド・エッグス


デソートのS-7カスタム・コンバーティプル・クーペ(一九四〇年型)


七十八回転レコード



- - - マリーン・スポーツ


スラック・キー(ハワイアン・ミュージックで使われるチューニングと奏法)でギターを弾く


波乗り

ダイビング

ヨット

釣り


- - - 英語の歌が聞こえてくる


ジープ


『銀座カンカン娘』


ビートルズ


- - - おそすぎたラブレター


ミス・キャシー・ブルックス


- - - ぼくの椰子の樹


パラダイス・アイランド

エジプト

ロサンゼルス


- - - コンドルは滑空していく


コンドル

イルカ

アシカ


ケーナ


- - - 二本の映画と一杯のコーヒー


怪奇映画

『山河遥かなり』

『マルタの鷹』ダシエル・ハメットの傑作小説

『地上より永遠に』

『赤い河』

『大空輪』


新宿アート・ビレッジ


ハンフリー・ボガード(私立探偵サム・スペード)

相棒のアーチャー美女


モンゴメリー・クリフト

ウエンデル・コリー


- - - カモナ・マイ・ハウス


スコッチのオン・ザ・ロックス


オープン・リールのテープ・デッキ


ジャズのピアノ・トリオ



- - - アメリカの小さな町


ブラス・オーケストラ


チューバ

トラッペット

トロンボーン

トランペット


- - - カウボーイ・ブーツ


「ブーツ着用のまま死す」


- - - ロードサイド・ダイナー


「ヘッドライトをふたつに、パンクしたタイアをひとつ、おくれ」

(ヘッドライトふたつ、というのは、ひっくりかえさずに焼いた、サニー・サイド・アップの目玉焼きふたつのことだ。そして、パンクしたタイアひとつとは、大きく焼きあげたパンケーキのことだ)


サニーサイドとパンケーキにそえて、豆の煮たのを皿に盛り、無料サービスとしてその客に出したという。

(豆はホーン(クラクション)よ)


- - - アイダホ州のジャガイモ


青いシボレーのピックアップ・トラック


コーク


- - - ラスト・アメリカン・カウボーイ


長距離輸送トラック

ピータービルトの18輪トレーラー・トラック


コーヒー


『魅惑の宵』(映画『サウス・パシフィック』で有名になった曲)



- - - これが天使の町だって?


サンタ・モニカ・フリーウェイ

ロサンゼルスのダウンタウン

シヴィック・センター

シティ・ホール

サン・ゲイブリル・マウンテンズ

シエラ・ネヴァダの山

バーバンク

グレンデイル

パサディナ

ポモナ

サン・バーナディーノ

リヴァーサイド


- - - ピックアップ・トラックの思い出


シヴォレーのステップサイド・ピックアップ(濃紺の地色をバックに、荒野の落日の光景が、エア・ブラシで描いてあった。マグネシウム・ホイールにB・F・グッドリッチのラジアル・タイアをはいていた)

シヴォレー・コルヴェットのファスト・バック(一九六四年型。気が狂ったようなオレンジ色のボディに、まっ白なペイントで、炎の模様が入念に描きこんであった。オレンジ色の車体のあらゆるところから、白い炎が噴き上げ、ゆらめいているのだ。前後ともフェンダーを広げ、前のタイアはレーシング・プロファイルのプロトラック50、うしろはグッドリッチのTA50)

まっ赤なピックアップ・トラック(白いアップライト・ピアノを荷台に乗せた)



- - - ぼくの好きな大空間


カリフォルニア

ニューメキシコ

アリゾナ

モニュメント・ヴァレー

グランド・キャニオン(ヘリコプターでさまよった)

小麦ベルトと呼ばれている広大な麦畑

サンフランシスコ

カリフォルニア・デルタと呼ばれる農耕地帯(トマト畑)


ビリー・ザ・キッド


- - - フロリダ・キーズとUSハイウェイ1号線


フロリダ半島

キューバ

フロリダ・キーズ(KEYS 砂州、さんご礁)

メキシコ湾

USハイウェイ1号線(オーバーシーズ・ハイウェイ)

フロリダ・シティ

エヴァグレーズの湿地帯

キー・ラーゴ

キー・ウェスト

パイン・アイランズ

ガーデン・キー(フォート・ジェファスンという古い要塞がある)


アーネスト・ヘミングウェイ

妻ポーリン

ヘンリー・M・フラグラー


- - - 18輪ジプシー


サワーロのサボテン


長距離のトレーラー・トラック


キューミュロニンバス(積乱雲)


アリゾナ


- - - 長距離トラックと雨風


アリゾナ


ユッカ

サワーロ

ジョシュア


トゥースンの町


森のハミングバードや荒野のボブキャット


- - - ギアを8段に落とし町の少年たちの野球を双眼鏡で見ながら西へ


長距離トレーラー・トラック


ジョニー

スペンサー


ロサンゼルス

ニューヨークのブロンクス


十五倍の双眼鏡


- - - アップル・サイダーと彼女


アップル・サイダー(二杯で五セント)

甘いリンゴと酸っぱいリンゴを一対一で半々にまぜてしぼったのが、一杯目。酸っぱいリンゴをすこし多くしてしぼったのが二杯目だ。

アップル・サイダーは、炭酸飲料ではない。炭酸が入っているものを想像しがちだが、そうではなく、リンゴをしぼって取ったジュースだ。

リンゴをよく洗い、昔から使っているジュースしぼり機にかけ、できたジュースを布でこしてきれいにしたものを、アップル・サイダーと呼んでいた。

アップル・ジュースは、スライスしたリンゴを熱湯で煮て、液をしぼり出したものだという。

キャンベルのカン詰めスープ


濃紺のフォードのピックアップ・トラック


ヴァージニアとテネシーの州境、クリンチ・マウンテン


まっ白いグライダー


ハロウィーンのカボチャお化け



- - - 他人の虹


北カリフォルニアのハイウェイ(通り雨のあと)

ホノルルのマノア峡谷(二重の虹を何度も、夜の虹)

道路わきの大きな熱帯樹の下(ほんとに小さく、自動車のタイアほどの大きさで、ぼうっと虹が出ている)


『誰かほかの人の虹の端』(THE END OF SOMEONE ELSE’S RAINBOW)

ワイリー・ブリッジャー

ジャヴィット

フランシーヌ


ポンティアック・グランプリ

コンチネンタル・トレールウェイズのバス

フォルクス・ワーゲン


22口径のライフル


―暗殺者のライフル


「イタリーはただ単に地理として存在しているにすぎない」メッテルニッヒ


ヴィクター・エマニュエル王

サルヴァトア・カルカノ

フェルディナンド・リター・フォン・マンリカー

ヒトラー

ムッソリーニ

アルベルト・バグナスコ

アンドリュー・ファーネス

ルイス・アンド・アーヴィング・フェルドスコット

リー・オズワルド(A・ヒデル)


テルニの、ロイアル・アームズ・ワークスという兵器工場

アダム帽子店

カミソリのジレット

ヴァンダービルト・タイア・アンド・ラバー・カンパニー

H・アンド・D・フォルソム・アームズ・カンパニー

アダム・コンソリデーテッド社

クラインズ・スポーティング・グッズ


ボルト・アクションのライフル(六連発)

マンリカー=カルカノ91「C2766」(イル・ノヴァソテューノ(91)) 十九ドル九十五セント


『ザ・ガン。ジョン・F・ケネディを殺した銃の伝記』ハリー・S・ブルームガーデン

『イル・テンポ』(イタリーの新聞)

『アウトドア・ライフ』

『フィールド・アンド・ストリーム』

『スポーツ・アフィールド』

『アルリカン・ライフルマン』


- - - オーディー・マーフィーというアメリカ人


「ノスタルジア」シリーズ(エース(ACE)・ブックス


『ぜんぶ色刷りページばかりで一冊わずか十セント』

『あの人はいまどうしてるの?』

『偉大なる子役スターたち』

『歴代大統領もの知り帳』

『偉大なる西部劇スター』ジェームズ・ロバート・パリッシュ

『大列車強盗』

『ならず者』

『地獄への往き帰り』自叙伝、映画

『テキサスから来た男』


ジョニー・マック・ブラウン

ティム・ホルト

ジーン・オートリー

ホパロング・キャシディ

ジョエル・マクリー

ガイ・マディスン

オーディー・リオーン・マーフィー

テクス・リター

ロイ・ロジャーズ

ランドルフ・スコット

ジョン・ウェイン

ジャック・ビューティル

ゲーリー・クーパー

ロッド・キャメロン

ウイリアム・エリオット


- - - ジャニス、たしかに人生はこんなものなんだ


ジャニス・ジョプリン

レッドペリー

キングストントリオ

オデッタ

ジーン・リチー

トミー・ストーファー

ベッシー・スミス

クリス・コナー

アニタ・オデイ

ポウエル・セント・ジョン

ラニー・ウィギンス

ザ・ウォラー・クリーク・ボーイズ

ローズ・マドックス


『ジス・ランド・イズ・ユア・ランド』ウディ・ガスリー


プログレッシヴ・ジャズ

ロックンロール

フォーク


玉突き台


カロム


スティール・ギター

ウッド・ベース

ドラムス

ハーモニカ

ベース


ビール

ウィスキー

バーボン


セコナール

メセドリン

ヘロイン


『コーヒーと混乱』という店

『コーヒー・ギャラリー』




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by space_tsuu | 2018-08-31 00:00 | 赤い背表紙(エッセイ)
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